本研究は無線ビーコン装置と簡易な高周波回路を組み合わせることによって,振幅情報だけでビーコンからの信号出発角を計算し,複数ビーコンからの出発角情報を用いることで三角法による高精度位置推定を実現するものである。振幅情報は,見通し環境では主に放射指向性によって決定付けられるため,その指向性を正しく実現することが精度に大きく影響する。提案法ではアナログの高周波回路(アンテナ給電回路)によってアレーアンテナ素子に所望の位相差を与え指向性を実現する。そのため,この回路の実現精度が位置推定精度に直接影響する。そこで,本年度は誘電体基板上に全ての回路素子をプリントにより構成する方法について検討してた。電磁界シミュレータで実現位相誤差が数度未満になるよう設計し,試作によって所望の位相差が得られることを確認した。また,高周波回路からの放射が,アンテナ指向性に与える影響を抑制するために回路全体をシールドするなどの工夫により精度向上を図った。続いて,試作したアンテナと回路を一体化し,実際のビーコン装置を用いて基本性能の評価を行った。本手法では出発角の推定精度が重要であるため,提案ビーコン装置を用いて実際に出発角の推定実験を行った。その結果,出発角推定精度は約2度であることが分かり,これは10m離れた地点では0.35mの位置精度に相当する。従って,本評価によって,設計・試作したアンテナおよび回路を用いることによって,十分高い位置推定精度が見込まれることが判明した。
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