研究課題/領域番号 |
16K14264
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
國分 泰雄 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (60134839)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 多次元変調 / モード変調 / 数モードファイバ |
研究実績の概要 |
光ファイバ伝送の超大容量化を目指す新しい取り組みとして,空間多重/モード多重が提唱され,2つを組み合わせた108空間チャネルが実証されている.さらなる大容量化には多値変調を組み合わせる必要があるが,多値度を上げると符号間距離が大幅に狭まる従来の直交位相振幅変調(QAM変調)の問題を解決するため,本研究では光ファイバの高次縮退直交モードを用いる多次元多値モード変調とモード分波器を用いない新しいモード受信機によって,超高符号効率伝送の実現を目指している. 初年度には数モードファイバのモード理論を再構築して,これまで40年にわたって光ファイバファイバのモードと考えられてきたLP(直線偏光)モードが実際には固有モードではないため,様々な誤った解析がなされてきたことを指摘した.数モードファイバの入射端で直線偏光光源によってLPモードを励振しても,伝播途中では固有モード間の干渉によって電磁界分布が変化して,出射端ではLPモードではないため,LPモード分波器は機能しないこと,それでもモード多重通信が実現できるのはMIMO信号処理によって入射端におけるモードが推定可能であるためであること,モード数が増えるとMIMO信号処理の負荷が指数関数的に増大してリアルタイム伝送が困難になること,などを指摘した.そしてこの解決策として,真の固有モードを用いる新しいモード多重通信方式を提案し,そのための固有モード合波器の構成法も提案して基本設計を行った. また,新しい原理に基づく高速モード分析法を考案し,この高速モード分析器がさらに高速化できれば固有モード受信機として機能することを提案して,この高速モード分析システムの光学系を構築した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は予想しなかったが,多次元変調のチャネルの基底に用いる光ファイバのモードについて,基礎理論を再構築したことによって,新しいモード多重化方式を考案することが出来た.この新方式を用いない限り,モード多重伝送にはMIMO信号処理が不可欠になり,信号処理による遅延が多次元変調の次元チャネル間にも遅延差を発生させるため,多次元変調が実現困難になる.したがって,本研究の最も重要な,しかも当初は予想していなかった問題を初年度に解決出来た.
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今後の研究の推進方策 |
初年度に気付いて解決先を提案した光ファイバの固有モード伝送法について,次年度で最終年度には以下の方法・計画で推進して,多次元変調にまでつなげる. (1) 厳密固有モード合波器の実証: 厳密な固有モードは直線偏光ではなく,円環状や放射状などの場所に依存する偏光方向をもつので,従来の LPモード合波器のみで生成することはできない.一方報告者らは,昨年度に,従来の LPモード用合波器の前段に2入力2出力の同相・逆相生成回路と偏光回転素子を付加すれば,厳密な固有モードを合波できることを示して,基本設計を行った.平成29年度にはこの厳密固有モード合波器の実証を目指す. (2) 高速モード分析システムの構築とモード受信機の実証: 昨年度に構築した高速モード分析システムの光学系に,4分割光検出器とFPGAを用いたコヒーレント信号処理系を組み込み,高速モード分析システムを完成させる.そして,この高速モード分析システムによって数モードファイバの伝播モードを詳しく分析して,昨年度に構築し直したモード理論の実験的検証を行うと共に,モード受信機としての使用の可能性を追求する. (3) 多次元変調の実証: 新たに提案した厳密な固有モードを用いるモード多重伝送を用いて,多次元変調を実証する.
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次年度使用額が生じた理由 |
光学系部品が当初予定より多少安かったことと,学会出張旅費が日程の重なりによって出張できずに減ったが,一方,電子回路部品が当初見積もりよりも多く必要になったため,総額で当初予定より10,000円の残額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
差額が10,000円であり,全体予算の0.5%であるので,次年度の消耗品代等に充当する.
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