空間多重/モード多重による光ファイバ伝送の超大容量化が提唱され,114空間チャネルが実証されている.さらなる大容量化には多値変調を組み合わせる必要があるが,多値度を上げると符号間距離が大幅に狭まる従来の直交位相振幅変調(QAM変調)の問題を解決するため,本研究では光ファイバの高次縮退直交モードを用いる多次元多値モード変調とモード分波器を用いない新しいモード受信機によって,超高符号効率伝送の実現を目指している. 初年度には数モードファイバのモード理論を再構築して,これまで40年にわたって光ファイバファイバのモードと考えられてきたLP(直線偏光)モードが実際には固有モードではないため,数モードファイバの入射端で直線偏光光源によってLPモードを励振しても,伝播途中では固有モード間の干渉によって電磁界分布が変化して,出射端ではLPモードではないため,LPモード分波器は機能しないこと,それでもモード多重通信が実現できるのはMIMO信号処理によって入射端におけるモードが推定可能であるためであること,モード数が増えるとMIMO信号処理の負荷が指数関数的に増大してリアルタイム伝送が困難になること,などを指摘した.そしてこの解決策として,真の固有モードを用いる新しいモード多重通信方式を提案し,そのための固有モード合波器の構成法も提案した. また,新しい原理に基づく高速モード分析法を考案し,さらに高速化できれば固有モード受信機として機能することを提案して,この高速モード分析システムの光学系を構築した. 2年度目で最終年度では,数モードファイバを伝播する真の固有モードをLPモード選択励振と近視野像観察から明らかにして,単一コア数モードファイバでは初年度に再構築した理論通りの固有モードが伝播すること,マルチコア数モードファイバでは理論に反してLPモードが固有モードとして伝播することを発見した.
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