研究課題
糖尿病患者は1日複数回の血糖値測定を強いられ,非侵襲かつ低コストな血糖値測定が求められているが,依然臨床的段階にない.高血糖状態では血液粘度が上昇し,特に血流が低ずり速度状態のとき,その上昇が顕著との報告がある.また,低ずり速度状態で発生する可逆的接着現象の赤血球集合は,血液粘度上昇と相関がある.これらから超音波による赤血球集合度の定量評価により非侵襲的血糖値測定の可能性がある.超音波散乱での散乱体サイズと入射超音波波長の関係から,散乱パワーとその周波数依存度nが変化する.赤血球および赤血球集合体を球散乱体と仮定すると,周波数帯域(27-45MHz)では,赤血球単体の長径(8ミクロン)から赤血球集合体の長径(60ミクロン)までサイズ増加に伴って散乱パワーが増加し,その周波数依存度nは3.5から0.5まで低下する.ヒト手背静脈の血管内腔を対象にin vivo計測を行った.血流停止前後に取得したRF信号の周波数スペクトル間の差をとり散乱特性変化のみを抽出し,散乱パワー比ρと周波数依存度変化Δnを算出した.RF信号は10秒ごと,計3分間で19回の取得した.最初の1分間は安静のまま,その後2分間は駆血して血流を低ずり速度状態にした.in vivo計測直後に皮膚穿刺により血糖値を測定し,本手法のパラメータと比較した.血糖値と散乱パワー比ρとの決定係数が0.33,血糖値と周波数依存度変化Δnとの決定係数は0.10となった.散乱パワー比ρの方が周波数依存度変化Δnよりも決定係数が高くなり,よりロバストといえる.しかし,値のばらつきは依然大きい.本手法は血流停止前との変化量により赤血球集合度を評価しているため,最終結果が血流停止前の赤血球集合状態に依存する.臨床で用いるには,この問題の解決が不可欠であるが,本報告では非侵襲的かつ定量的な赤血球集合度評価の可能性を示すことができたと言える.
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