研究課題/領域番号 |
16K14279
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
金 亨燮 九州工業大学, 大学院工学研究院, 教授 (80295005)
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研究分担者 |
青木 隆敏 産業医科大学, 医学部, 准教授 (40299631)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 関節リュウマチ / コンピュータ画像診断支援 / MSGVF Snakes / Salient Region Feature |
研究実績の概要 |
骨に関する主な疾患として,関節リウマチや骨粗鬆症が挙げられる.関節リウマチとは,滑膜に炎症反応のような免疫系の異常反応により,手指,足趾,手首の関節に痛みや腫れを引き起こす疾患である.しかし,発生原因は現代の医学では正確に解明されておらず,症状が進行すると自由に関節を動かすことが困難になる. 本研究では,関節リュウマチや骨粗鬆症の診断支援を行うため,画像解析法を構築している.そのための要素技術としては,関心領域の自動抽出,画像位置合わせ法の開発及びパターン認識の3段階による解析法が必要である.本28年度においては主に,関心領域の自動抽出法の開発と画像位置合わせ法の構築,特徴解析の一部に取り組んだ. CR画像上の指骨の関心領域を自動抽出する手法としてはまず,画像前処理による粗抽出を行い,濃度勾配特徴に基づくMSGVF Snakesによる各指骨領域の抽出法を提案した.実験では,提案法を実CR画像に適用し,真陽性率約93%,偽陽性率約6%の領域抽出の精度を得た. さらに,同一被験者の過去・現在の異なる時系列間で得られる画像同士の位置合わせを行うための画像処理法を提案した.骨びらんや骨変形症の解析においては,経時的差分像を同時に提示することにより,診断性能の向上が見込まれている.その理由として,骨粗鬆症や小さな骨変形は発見が難しいが,画像位置合わせを行った後に得られる差分像上には,これらの病変部が強調表示ができる可能性が高い為である.本年度には,指骨領域の自動位置合わせのための剛体変形法として,Salient Region Featureに基づく位置合わせ法画像位置合わせ法を実装し,合成データと一部の実データによる性能評価を行った.合成データによる実験の結果,おおむね良好な位置合わせ精度を得た.また,経時的差分像上の定量評価法の検証のための特徴量解析を行い,その有効性を確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,手のCR画像から骨粗しょう症の全自動診断支援を行うためのCAD(Computer Aidied Diagnosis)システムの開発を目的としている.提案するシステムは大きく,「対象領域の抽出」,「過去画像と現在画像の位置合わせ」,「特徴量解析」,「自動識別」のステップで構成されている. 本年度は,当初計画していた,「同一被験者の過去・現在画像からの各指骨領域自動抽出法」を提案し,3症例の過去・現在CR画像に適用した結果,医療従事者のマーキング結果を正解とした性能評価において,平均93%の領域抽出精度を得た. また,「各指骨領域の画像位置合わせ法による経時的差分像の生成」法として,剛体位置合わせ法を提案した.合成データ並びに実CR画像両方に同位置合わせ法を適用した結果,平均90%以上の位置合わせ精度を得た.特に,従来のTemplate matchingや遺伝的アルゴリズムによる位置合わせ法と比較してもエントリピー相関係数において提案法がより高い性能を示している. さらに,「経時的差分像上の経時的変化分の定量評価法の開発」においては,関心領域内の濃度特徴量(平均値,分散,歪度,尖度,エネルギー,エントロピー),濃度共起行列からのモーメント特徴量やフーリエ解析による特徴量を求め,定量的評価指標を提供するための検討を行った.実験では,特徴量解析において主成分分析を用いて識別に有効な特徴量を自動で抽出し,識別器としてANN(Artificial Neural Network)とSVM(Support Vector Machine)をそれぞれ適用し,骨粗しょう症の有無の自動識別を行うための手法の開発を行った.
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今後の研究の推進方策 |
本年度研究成果より見えてきた課題の解決に向け,さらなる画像解析の法の開発と平成29年度研究課題である「テクスチャー特徴解析による骨粗鬆症の診断支援」をメインに研究を進める予定である.具体的には,平成28年度の成果中,1)画像データ数を増やした実験の実施,2)さらなる関心領域自動抽出の精度向上,3)画像位置合わせにおける計算時間の低減などの課題に加え,フラクタル次元解析を加味したテクスチャー解析法の確立を目指す. 以上の課題をクリアするための画像解析法として,平成29年度には深層学習(Deep Learning)に基づく自動識別に積極的に組む予定である.そのためには骨粗鬆症や骨びらんといった異常症例だけではなく,正常症例も含む多量の画像データベースを構築する必要があり,現在データ作成にも取り組んでいる.また,計算時間の軽減を実現するための最適化法の開発とGPUボードの実装,並列計算アルゴリズムの実装にも取り組む予定である. 以上の推進方策を踏まえた画像解析法を構築し,臨床実験を行うためのソフトウェアの開発に繋げ,実用化のためのコンピュータ画像診断支援法を開発する.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していたソフトウェアの納入が間に合わなかったため,次年度への繰り越しをお願いしたい.
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度前期に納入可能であるため,平成29年度前期に購入する予定である.
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備考 |
研究室のURLに研究室の研究内容を紹介中
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