本研究はDNAやたんぱく質等の生体分子の電気的特性を広帯域に計測可能なデバイスの開発を目指し,その電気的特性の違いに基づいた腫瘍マーカーの検出・定量・同定法の可能性を探求することを目的としている.具体的には,微細電極の電極間に,交流電界を印加することで,電極付近に分散したDNA等が電界方向に伸長し,さらに電極間に架橋させる.電極間に架橋されたDNAのインピーダンスを低周波数帯域から高周波帯域まで広帯域に計測する. 平成30年度では,電子線リソグラフィによりガラス基板上に作成したナノギャップ電極およびマイクロギャップ電極の試作,電極形状およびデバイスの特性インピーダンスに関して電磁界解析による評価を行った.試作したデバイスを用いて,電極間に交流電界を印加させることで,ナノサイズの粒子を誘電泳動により電極間に架橋し,そのインピーダンスを測定することで,デバイスの有用性を確認するとともに,ナノ粒子の電気的特性計測を実現した. また,DNAの電気特性計測を行うために,上記デバイス上にPDMS製のマイクロ流路を作成した.作成したマイクロ流路から導入されたDNA溶液中のDNAを誘電泳動により,電極間に伸長させるとともに架橋させた.架橋したDNAは電子顕微鏡を用いて,その様子を確認した.架橋したDNAはインピーダンスアナライザを用いて,電気的特性を測定した.また,測定したインピーダンスの周波数特性をもとに,DNAの等価回路モデルを作成した.
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