制御工学においては,2000年以降,マルチエージェントシステムのフォーメーション形成の研究が世界的なブームとなっている.その一方で,目標とするフォーメーションとして考えられてきたのは,円形やV字など単純な幾何学パターンに限られていた.このような背景のもと,本研究では,マルチエージェントシステムのフォーメーション形成によって,任意の動画像を表現する「マルチエージェントディスプレイ」の基礎的理論を開発することを目的とし研究を実施した.主な成果は以下の通りである. (1)グラフ信号のデルタシグマ変換:各エージェントが離散値の発光装置を備えて,画像をディスプレイする問題は,グラフ信号のデルタシグマ変換の問題に帰着される.一方,グラフ信号に対しては,近年さまざまな信号処理手法が得られていたが,デルタシグマ変換に関しては我々の知る限りにおいて成果は得られていなかった.本研究では,時間信号のデルタシグマ変換を拡張することでグラフ信号に対する変換技術を開発した. (2)マルチエージェントシステムのカメラ視界被覆:各エージェントがプロジェクタを備えて画像をディスプレイする問題は,カメラ視界被覆の問題に帰着される.本研究では,カメラ視界被覆問題を定式化し,勾配法を利用した方法を開発した.
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