研究課題/領域番号 |
16K14289
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
千々和 伸浩 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 准教授 (80546242)
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研究分担者 |
岩波 光保 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 教授 (90359232)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 残存プレストレス / 膨潤作用 / プレストレストコンクリート / 画像解析 |
研究実績の概要 |
本研究は水による膨潤作用を利用して,プレストレストコンクリート構造物中の残存プレストレス量を推定しようとするものである.今年度の実験では10㎝-10㎝-20cmの小型試験体を用いて一軸圧縮条件下における基本コンセプトの可能性確認と, 20cm角のアンボンドPC部材を用いたより実橋梁に近い条件下での検証実験を行った.検証の結果から極めて微弱な信号ではあるものの,残存プレストレス量の有無を確認できる可能性があることを確認できた.ただしこのためには高精度の計測法と,水の膨潤作用を阻害しないような計測方法を用いることが必要であることも明らかになった.今後は微弱信号を増幅する方法について検討を行うとともに,既設の材料の乾燥を促進し,より現実に近い条件としたうえでの実験的検討を行うとともに,数値解析を用いて対象コンクリートの含水率や空隙構造の影響について分析を行う予定である. また2年目に開発を予定していた画像解析手法についても一部先行して開発を行い,画像相関法によるひずみ分布を算出することは可能になった.ただしこれを今回のような微小な信号の分析に用いるには,数値フィルターによる特定信号の増幅や,計測面の予備処理や画像のプレ処理が必要であることも明らかになったので,これらの点について現在検討を進めているところである. なお基本的な可能性が確認できたことを受け,PC鋼線の破断を模擬した実規模スケールのPC桁の載荷実験にて検証する機会を得ることができ,平成29年度にその実験を行う予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2016年度の検討から,本研究のコアとなる膨潤作用による残存プレストレス評価の可能性を確認することができた.実験では予想したものと違う結果が得られたりして,その原因解明に予定していた以上の時間を要したものの,一連の検討結果から計測方法の必要要件を明らかにすることができたと考えている.その一方で信号が予想以上に微弱であるという課題も明らかになり,その克服が新たな課題となっている.これについては信号処理の分野の知見を応用しながら検討する予定である. 面的に残存プレストレスを捉えるための画像解析システムについては,予定に若干先行して開発を行ったが,ひずみの面的計測についての基本システムについての開発を完了させることができた.これにより今後は本研究の目的に合うようなシステムの高精度化にのみ注力すればよい状況となっており,今後の進展が期待される状況にある.
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今後の研究の推進方策 |
2016年度の研究成果から,微弱ながらも残存プレストレス検証の可能性が示されたことから,今後は適切な数値フィルターの組み合わせにより信号の増幅・抽出を行いたいと考えている.コンクリートの配合や含水状態といった点の影響については,実験によってキャリブレーションした数値解析によって検討する予定である.先行して進めた画像解析システムについても基本システムの構築は完了したことから,今後はこの高精度化を目指し,計測面の予備処理方法の検討や撮影画像のプレ処理についても検討を行うことを考えている.これまでの検討は一般的なカメラを用いたものであるが,カメラ画像素子の高機能化によっても解決可能な課題や,あるいは新たに顕在化する可能性がある課題もあることから,現時点における高画素・高色深度のカメラによるテストも行い,面的に残存プレストレスを把握することが可能なシステムを構築したいと考えている.
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