研究課題/領域番号 |
16K14290
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高谷 哲 京都大学, 工学研究科, 助教 (40554209)
|
研究分担者 |
上田 尚史 関西大学, 環境都市工学部, 准教授 (20422785)
内田 慎哉 立命館大学, 理工学部, 任期制講師 (70543461)
川崎 佑磨 立命館大学, 理工学部, 准教授 (90633222)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 物質透過性評価 / 水分移動 / 赤外線サーモグラフィ |
研究実績の概要 |
本研究課題は,コンクリート構造物における様々な劣化の原因となる水の影響を可視化する非破壊検査手法を構築することを目的としている.しかし,コンクリート構造物の物質透過性についてはまだ不明な点も多く,この点についても考慮する必要があると考え,まずはコンクリート表面からの物質透過性を評価することとした. そのため,W/C40%,50%,60%のコンクリート供試体を作製し,比較的表面張力の小さいシラン系表面含浸材と表面張力の大きい亜硝酸リチウムを塗布して含浸深さをラマン分光分析により検討した結果,シラン系表面含浸材はW/C50%で最も深くまで浸透したが,亜硝酸リチウムではW/Cの違いは明確には現れなかった.また含浸深さはシラン系表面含浸材の方が大きいことが確認された.使用したコンクリート供試体の透気係数はW/C60%で最も大きく,W/C40%で最も小さかったため,透気係数の傾向と含浸深さの傾向が異なることになる.そこで,水銀圧入法により細孔径分布を測定を行った.その結果,W/C40%では約50nmの空隙が多く,W/Cが大きくなるにつれて50nm以上の空隙が増加し,一方で5nm程度の微細な空隙が増加することが確認された.そのため,シラン系表面含浸材の場合には5nm程度の空隙がボトルネックになった可能性があると考えられるが,亜硝酸リチウムの場合には,もう少し大きな空隙構造が関係した可能性があると考えられる.水も亜硝酸リチウム同様水素結合が大きいため,表面張力の大きい溶液の物質透過性については今後さらに検討する必要がある. マイクロ波加熱と赤外線サーモグラフィを用いて水の浸透深さを測定する供試体も作成済みであり,赤外線測定に加えて,含浸深さの測定,透気係数の測定,細孔径分布の測定も行い,結果を比較する予定である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画では,水がひび割れを通じて供給されることを考えて,ひび割れから浸入する水をマイクロ波加熱と赤外線サーモグラフィを用いて評価する予定であったが,ひび割れを生じていない場合の物質透過性についても検討する過程で,コンクリートの物質透過性そのものに不明な点が多いことが分かったため,ひび割れ発生前とひび割れ発生後の両方で水分移動特性を評価できるようにするために,物質移動特性評価を追加で行った. そのため,当初計画よりもやや遅れる結果となった.
|
今後の研究の推進方策 |
ひび割れ発生前においては,マイクロ波加熱と赤外線サーモグラフィにより測定された結果を評価するに当たり,様々な表層品質のコンクリートにおける水分移動特性を評価することが重要であると考えられる.そのため,水分移動に与える空隙構造の影響を明確にし,マイクロ波加熱と赤外線サーモグラフィ測定結果と併せて考えることとする. ひび割れ発生後についてはひび割れ幅やひび割れ深さを調整した供試体を用いて,水分移動特性をマイクロ波加熱と赤外線サーモグラフィにより評価できるかどうかを検討することとする.
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初はひび割れを生じたコンクリート供試体への水分移動特性をマイクロ波加熱と赤外線サーモグラフィ測定により評価する予定であったが,追加でコンクリートの水分移動特性に与える空隙構造の影響についても検討することとしたため,当初計画で予定していた熱拡散解析や水分移動解析,マイクロ波加熱がひび割れに与える影響についての検討が遅れた.
|
次年度使用額の使用計画 |
当初計画で初年度に予定していた熱拡散解析や水分移動解析,マイクロ波加熱と赤外線サーモグラフィ測定を用いた水分移動特性評価を次年度予算と合わせて行うこととする. また,追加検討として,水分移動特性に与える空隙構造の評価を行うために,水銀圧入法による細孔径分布の測定を行うこととする.
|