研究課題
橋梁を対象にした解析の結果、橋梁の向きに依存せずに安定的に橋梁の変動を推定できる手法の確立は困難と分かり、対象を橋梁から一般的な人工構造物や地盤に切り替えた。平成30年度は、人工構造物の解析で得た知見を活かしつつ、衛星画像および外部データを活用した人工構造物や地盤の三次元変動を推定する手法を構築した。地物の変動を解析する手法としてPersistent Scatterers Interferometry SAR (PSInSAR)が広く知られているが、この技術によって推定される変動は衛星視線方向のみの一次元変動に限られる。よって、以下に示す三つの方法で、人工構造物や地盤面の三次元変動を推定した。(1) PSInSARを用いた二次元解析:上昇軌道と下降軌道という異なる軌道のSAR画像をPSInSAR解析し、南北方向の変動がないと仮定し、その統合を行うことで、鉛直・東西方向の変動を推定する。(2) PSInSARを用いた三次元解析:衛星画像から得られる変動ベクトルを増やすために、異なる軌道のSAR画像に対してサブ開口処理を行い、前方視と後方視のSAR画像を作成する。各軌道の前方視と後方視のSAR画像からPSInSAR解析を行い、最小二乗法によって統合し、三次元変動を推定する。(3) PSInSARと測量結果の統合による三次元解析:異なる軌道のSAR画像をPSInSAR解析し、測量結果の内挿と最小二乗法によって統合し、三次元変動を推定する。関西国際空港を対象に実施した実験では、全提案手法に関して東西方向の定性的かつ鉛直方向の定量的な妥当性が示された。しかし南北方向についてはSARのみでは推定は難しい一方、測量結果の統合により解析が可能であること、結果的にPSInSARにより人工構造物の三次元変動を推定できる可能性を示せた。
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