現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでの研究で,文献(Okazawa,Usami,Noguchi,Fujii:J.Eng.Mech.,ASCE,128,2002)に基づいて確率を導入していない通常の非線形有限要素法プログラムを構築し,平面ひずみ弾塑性引張り問題を解析している.そこでは,荷重増分を材端に与えてゆく初期不整が混入しない完全系での扱いとして,独自にプログラムを構築して文献の再現を試みており,荷重極大点を過ぎた後に分岐点を含む塑性不安定領域が現れることを確認している.
本研究では,ヤング率や降伏応力が確率変数であるような確率弾塑性問題を扱っており,その意味で不完全系である.不完全系の場合,明確な意味での分岐点なるものは消滅し,解は繰返し計算における数値誤差によって最も不安定な解に到達してゆくことが知られている.申請の当初より,塑性不安定領域での解析が関係するとは予想していたが,H29年度末に入りその範囲での解析に直面している.市販の有限要素法プログラムでは,自らサブルーチンでも構築しない限り,塑性不安定解析がベースで組み込まれているようなものはないと思われる.その意味からしても,実用の範囲においては塑性安定領域がしっかりとカバーできれば問題はないとも考えられる.しかし,本研究を始めた発端は,有限変形弾塑性の範囲でスペクトル確率有限要素法を構築することと,確率と数値誤差が関係することで仕事量がより少ない最も不安定な解に次第に到達してゆく過程をどうにか示せないか,ということであった.申請期間である3年以内において,確率を用いたその制御方法までは到達できなくとも,どのような応力の遷移を経て最も不安定な解に到達してゆくかを確率を通すことでみられるのではないか,とも考えている.
H29年度末からH30年度の現時点において,正にその問題に直面していることから,進捗状況として「やや遅れている」と回答した.
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