当該年度は以下を行った. 第一段階として,構築してきたNISP確率有限要素法(以下NISP-SFEM)を2次元の有限変形確率弾塑性問題に適用し,塑性安定領域および塑性不安定領域での解析を行った.同一な形状モデルの単純引張り問題であっても,境界条件が荷重か変位かによって全くの別問題となる.荷重増分の境界条件下では,内力が境界荷重と釣合いを保とうとするため,降伏応力に与えた確率変動が応力に反映されない.そのため,変位増分の境界条件に切り替えて解析を行った.この場合は,不完全系となり解は繰返し計算における数値誤差により分岐解に漸近してゆく.前段階として荷重増分の境界条件の下で確率を導入しない完全系での解析を行い分岐経路を得ているが,これに漸近する経路を得る結果となった.塑性不安定領域においても,降伏応力に与えた確率変動の影響が,応力の確率変動に精度良く反映されることが確認できた.この研究内容については,2018年度の応用力学シンポジウムで発表を行っている他に,現在は論文の査読審査中である. 第二段階として,分岐経路上における応力の遷移状況について,降伏関数の確率分布を追うことでその遷移を調べた.この降伏関数の確率的遷移を見る限りでは,主経路から分岐経路に移行する過程では除荷側の応力だけでなく載荷側の応力も生じるなど幾つかの卓越応力が生じる状態となっており,変位増分の境界条件としているためやがては分岐経路へと漸近してゆく.応力場の確率分布が複雑となるため,Legendre PC展開を5次の項までとり解析を行った. 第三段階として,3次元有限変形確率弾塑性問題について,NISP-SFEMを構築し解析を行った.本解析により,3次元の有限変形確率弾塑性問題についても,NISP-SFEMは確率変動を正確に捉えることが示された.本研究内容は,2019年度の計算工学講演会にて発表予定である.
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