研究課題/領域番号 |
16K14305
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
飯塚 敦 神戸大学, 都市安全研究センター, 教授 (40184361)
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研究分担者 |
竹山 智英 神戸大学, 工学研究科, 准教授 (00452011)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | デコルマ帯 / 鉱物変質 / スロースリップ / 弾塑性構成式 / ダイレタンシー特性 / ひずみ軟化 |
研究実績の概要 |
本研究では,土/水連成の力学体系で,スメクタイトからイライトへの変質を表現できる弾塑性構成モデルを開発した.考慮した現象は,スメクタイトの層間水の脱水,イライト化に伴う摩擦特性の変化及び,ダイレイタンシー特性の変化である.本研究で提案したモデルでは,イライト含有量が多いほどせん断強度が大きくなり,このことは実験事実に整合する.また,実際のデコルマ帯では,プレート沈み込みに伴うせん断力を受けながら変質していると考えられるが,このような条件を満たした実験は行われておらず,長期間の力学挙動は未解明である.そこで,プレート沈み込みを想定して,せん断力を受けながら変質した場合の力学挙動について調べた.その結果,変質により過剰間隙水圧が発生した.実際にデコルマ帯において過剰間隙水圧の発生が計測されていることから,これは実現象に一致する結果であるといえる.さらに,粘土鉱物が変質に伴う土粒子密度増加による剛性変化を,降伏応力を増加させることで表現しているため,変質に伴い試料は過圧密化する.そのため,せん断シミュレーションより得られた力学挙動から,変質しながらせん断力を受けることでひずみを蓄積し,せん断力を受け続けるとやがて軟化して強度が低下することが分かった.このことは,デコルマ帯で固着が生じ,ゆっくり地震が発生するメカニズムに一致する.このように,スメクタイトのイライト化を表現することで得られた力学挙動から,デコルマ帯における固着とゆっくり地震を連続的に説明することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的である弾塑性構成モデルを開発している.この構成モデルを土・水連成場に組み込み,試行シミュレーションを行ってみたところ,これまでの観測結果と整合する結果を得た.すなわち,デコルマ帯表層部におけるスメクタイトからイライトへの変質に伴う過剰間隙水圧の発生,イライトへの変質に伴う剛性と強度の増加を表現することができた.このような数理モデルによって,イライトへの変質に伴ってデコルマ帯表層部が固着し,アスペリティーを形成する過程が説明できる.特に,アスペリティーがひとたびせん断剥離した後,デコルマ帯の海溝深部への深入に伴って,二度とアスペリティーが形成されない事実,すなわち,アスペリティーの形成がある特定の深度に集中しており,それ以外には見出されていない事実に対して,ここで提案する数理モデルでは,変質に伴い,材料の過圧密化が生じ,アスペリティーのせん断剥離時には吸水・ひずみ軟化挙動を示すことによって説明できる可能性がある.
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今後の研究の推進方策 |
本研究で開発された弾塑性構成モデルの高度化を行う.すなわち,本研究で開発された数理モデルによって,デコルマ帯における地震現象,すなわちスロースリップ現象をより良く説明できているかの検証を行う.さらに,有限要素法を用いた初期値・境界値問題として,デコルマ帯におけるアスペリティー形成とせん断剥離とスロースリップ現象との関係を明らかにする.当初の研究計画通りに研究を遂行する.
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