研究課題/領域番号 |
16K14306
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
中島 伸一郎 山口大学, 創成科学研究科, 助教 (70346089)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 岩石 / 亀裂 / 圧力溶解 / 圧子 |
研究実績の概要 |
圧力溶解現象による岩石亀裂の間隙構造,接触状況を直接的に観測する手段のひとつとしてX線CTによる手法を試みた.含水飽和した花崗岩の単一亀裂に拘束圧を作用させて長時間保持し,定期的なX線CT撮像を行うものである.X線CT画像から亀裂を抽出する画像処理法として,従来の二値化法,領域拡張法(region growing)を試行したが,岩石実質部と亀裂部を分離する閾値の設定の困難さやノイズの影響等により,幅の細い亀裂や,高密度鉱物を貫く亀裂の抽出が困難であることが明らかとなった.花崗岩のような不均質な岩石材料ではその傾向は強い.一方,画素値の空間勾配を利用したエッジ検出法(Canny edge detector)は,亀裂壁面の位置を感度良く検出し,二値化法や領域拡張法では困難な幅の細い亀裂も抽出することが可能であることが明らかとなった.エッジ検出法を用いて拘束圧載荷初期のCT画像から亀裂を抽出したところ,平均開口幅0.14 mm,接触率7%という比較的妥当な結果を得た.また,拘束圧3.0 MPaで100日間保持したときの亀裂の開口幅の変化をX線CT画像から測定したところ,亀裂全体で0.030 mm程度の閉口が生じている結果となった.拘束圧の長期載荷による亀裂の閉口の傾向は,パルス法による透水試験の結果と概ね整合するものである.ただし,X線CTスキャナの空間解像度を考慮すると有意な変位量とは言い難い.拘束圧の増大,加温,保持期間の長期化等による圧力溶解現象の加速が必要と考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は,岩石亀裂の圧力溶解現象についてX線CTによる可視化,亀裂抽出のための画像処理法の開発に注力した.微小圧子実験のための圧力条件,温度条件について一定の目安が得られたことは成果であり,おおむね順調に進展しているといえる.微小圧子押込み試験に関しては実験の設計を実施し,次年度以降の準備を行った.
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今後の研究の推進方策 |
マイクロインデンテーションによって岩石表面に圧力溶解沈殿を発生させるための実験仕様(圧子・試料・載荷・環境条件)と計測手法の最適化を行い,試験装置を開発する.また,花崗岩亀裂をサンプルとして,圧力・温度・時間に依存する鉱物ごとの溶解沈殿量と,それに伴う固着度・摩擦強度の変化を測定し,別途行われる花崗岩単一亀裂のせん断・透水試験の結果との比較を行って妥当性の評価を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度内に,圧子押込み実験システムの開発を完了予定であったが,実験仕様が確定しきれなかったため,次年度に持ち越した.
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次年度使用額の使用計画 |
圧子押込み実験システムを開発する計画である.
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