本研究では,レーダー・ライダーと数値電場モデルを使った雷ハイブリッドモデルによって火山雷の観測と解析を行ってきた.具体的には,京都大学防災研究所附属火山活動研究センター桜島火山観測所のXバンド偏波レーダーを用いて,独自に開発した現位置火山礫粒径観測装置を使った大気中の火山礫の粒径分布推定を行うSRHIモデルから,高橋の着氷電荷分離機構にしたがった大気電荷・電場推定と放電による中和過程を実装した.また,雷発生を予測できる雷ハイブリッドモデルを開発してきた. 2018年2月にインドネシア・スマトラ島のシナブン火山で大規模が噴火があった様子を別のプロジェクトで設置したXバンド偏波レーダーで観測していたので,そのデータから雷ハイブリッドモデルを通して内部の電場構造を再現した. その結果,Sinabung山の爆発的火山噴火の際にレーダーエコーが現れてから189秒で雷放電電場3.4×10^5V/mを超える電場が発生していることが明らかになった.高電場域の発生位置は火口直上~高度7000mの範囲で,電場ベクトルは鉛直成分が強い発散形状を示すことが分かった.また,電場ベクトルは粒子の動きに沿った向きを示す傾向も見られた.さらに噴火発生から10分経過後に噴煙柱内部に0.3mm付近を核とする粒子の凝集部分が発生すること,噴煙の頂上において偏波間相関係数が0.9を超す一様な粒子で構成されると考えられる部分が存在することが分かり,噴煙内部の電荷が3極構造で構成されている可能性を見いだせた.本事例では,噴火後に流下した噴煙が再浮上している様子がライブカメラによって見られ,それに対応したレーダーエコーにおいては,4種類の降水粒子が絡み合う複雑な混在を示す反射因子を返すことが分かった.
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