研究課題/領域番号 |
16K14312
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
陸田 秀実 広島大学, 工学研究院, 准教授 (80273126)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 津波シェルター / 弾性係留索 |
研究実績の概要 |
水害シェルターに作用する漂流物の衝突力の直接推定とその評価手法を提案した.スーパー弾性係留システムを有する浮沈式水害シェルターには,災害時に様々な漂流物が衝突する.例えば,浸水流のみが流体力として作用した場合,浸水深と流向,構造物の形状(例えば,ビル群の場合)によって衝撃力は大きく変化することが先行研究で明らかとなっている.これに加えて,実際の水害では,家屋,木材,鋼製フレーム,車,船など,形状や比重の異なる漂流物が,浸水流に押し流され水害シェルターに作用することとなる.その際,シェルター外板に大きな衝撃力が作用し,大変形および亀裂・破壊が生じる.以上のことを踏まえ,前年度開発された数値シミュレーション法(SPH-EDEMとDEMのカップリング手法)をさらに拡張し,漂流物と構造物の直接衝突によって発生する衝撃力を直接推定した.その結果,浸水流の流体抵抗を大幅に低減することが可能な流線形状の最適化を行った.また,現存する様々な構造物の形状や高さが流体力に及ぼす影響を明らかにするだけでなく,浸水流の水位・流速と流体力の関係を明らかにした.さらに,その浸水実験(広島大学所有の大型水槽)を行い,水害シェルターに作用する衝突力の計測を行い,数値計算手法の妥当性と衝突力の特徴を明らかにした.加えて,衝撃力と津波シェルター運動を大幅に低減させることが可能な弾性係留索の有用性についても明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に引き続き,新しい数値計算法の確立およびそれを検証するための実験を実施し,妥当性を確認した.また,同手法を用いた数値実験を行い,有用な津波,シェルターおよび漂流物の3者間の相互作用に関わる有用な結論を得た.以上のことから,当研究は,おおむね順調に進展していると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,以下の点について研究遂行する.1.ダブルハル構造の検証と浮沈調整制御:例えば,津波や洪水時には,車・家屋・船舶といった漂流物が陸上建造物に衝突し,建物被害を拡大したと言われている.そこで,船舶構造様式の分野で実績のあるダブルハル構造(外壁を2重構造)を適用する.これによって,漂流物による衝撃圧を緩和すると同時に,破損時のシェルターへの浸水被害を回避することができるため,避難構造物としての機能は損なわない工夫を施す.本申請では,耐波性と安全性の向上を目的として,ダブルハル型のシェルター模型を製作し,各種漂流物模型(例えば,家屋や車・船)を作用させ,その衝撃力によって最外縁の隔壁が損傷した場合の安定性・安全性を検証する.また,ダブルハル構造にバラスト水を注入し,その浮沈効果と制御方法について実験による検証を行う.2.基本設計指針の確立: 項目①~④で得られた知見に基づいて,スーパー弾性係留システムを有する浮沈式水害シェルターの基本的な設計指針を確立する.これに基づいて,小型~大型規模の水害シェルターの設計が可能となり,地域のニーズに合わせたカスタマイズができる.
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