研究実績の概要 |
異常気象に伴う大洪水や巨大津波への対策技術の一つとして,漂流式・自航式・係留式のシェルターが提案され,収容人数と設置環境に応じて,様々なサイズや形状のものが開発されている.これらを設計する際は,浸水深や流勢について注意を払う必要がある.特に,浸水流や漂流物による衝突圧,さらには定常流による流体力を低減することが極めて重要となる.このような背景の下,申請者は,浸水流の流勢に抗するのではなく,それらを巧みに回避する「浮沈式水害シェルター」を開発した.
本シェルターの特徴は,数十人~数百人規模の人々(子供からお年寄りまで)が,迅速かつ安全に避難できる点にある.さらに,被災後は仮設居住区・緊急医療施設として,通常は住民のコミュニティー空間や備蓄倉庫(水産物や加工品,防災食品など)として,多用途にも活用できる点である.本申請では,低浸水時は浮上する一方で,高浸水時には没水する新しいタイプの浮体構造物を提案するとともに,浸水流による流体力や衝撃力を大幅に低減することが可能な要素技術を提案・開発した.また,それらの要素技術を統合し,実用化を見据えた基本設計を行った.
本研究では,今後の実用化を見据えて,耐波性・安全性・運動性・機能・利便性等の高性能化を図るべく,「スーパー弾性係留システムを有する浮沈式水害シェルター」を提案・開発した.具体的には,1)シェルター形状の最適化, 2) スーパー弾性係留システムの基本設計, 3) 水害シェルターに作用する漂流物の影響, 4) ダブルハル構造の検証と浮沈調整制御の各研究を行った.
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