研究課題/領域番号 |
16K14315
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
谷口 守 筑波大学, システム情報系, 教授 (00212043)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | サイバースペース / 見えない都市 / 実空間 / アクセシビリティ / ハイブリッド |
研究実績の概要 |
1)インビジブルシティのメカニズム解明と連携コンセプトの提案:まず最初にスマホ等の普及などに伴い、目に見えない形で拡張するインビジブルシティの実態、および既存実空間(コンベンショナルシティ)の縮退を文献調査等より把握した。あわせて関連諸制度についても体系的な整理を行った。その上で両シティの長所を活かす基本コンセプトとして、コンベンショナルスペース、サイバースペースの2つのマグネットに対し、両方の利点を備えたハイブリットシティの構築(第3のマグネット)を目指すことを考え、そのための課題を整理した。 2)分析原理・方法論の開発:インビジブルシティは実空間での活動を単に代替するのではなく、潜在的な欲求のつながりの中で活動が連鎖しているため、投入産出分析よりヒントを得た潜在行動連鎖表(LNij)に基づく新たな分析法を検討した。あわせてサイバー空間とコンベンショナル空間の両空間を一体的に評価するための方法論について、実空間での諸活動の集積の高さと、サイバー空間を通じた具体的な場所の選択行為をあわせて空間上に明示し、その形態を評価する方法論を開発した。 3)第3のマグネット論展開のための予備調査の実施:性格の異なる複数の実都市を対象に、上記2)の方法論を展開するための予備調査を実施した。具体的にはデジタルチェックインの実数変化を地点別に経年的に明らかにすることで、ネットコンシャスな都市とそうでない都市の展開の違いを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既存研究を整理したうえで、基本的な概念・コンセプトを予定どおりしっかり押さえることができた。また、既に一部の分析データの入手が可能となっており、それらをベースに検討を行った結果、既に学会発表を行う水準にまでアウトプットを出すことができている。これらの諸点を鑑み、予定どおりの進捗を行っていると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
1)実空間での交通利便性の計測も含め、ネットコンシャスな都市を定量的に評価するための混合アクセシビリティ指標の構成を検討する。そのうえで、かつて都市の魅力と農村の魅力の両メリットを包括した田園都市が時代を転換したように、コンベンショナルシティとインビジブルシティのメリットをあわせもった新コンセプトに基づく都市の進化の方向性を言及する。 2)アクセスランク上位の都市施設を対象に、そのHPやブログ等の内容解析を実施し、まち中に人をいざなう効果的なO2O方策の構成要素を検討する。あわせて、Twitter等のSNSで都市・場所名を内在するコミュニケーションを抽出し、そのコンベンショナル空間における活動の投影実態をKH-Coderなどのツールを通じて把握する。 3)Society5.0などの構成要素技術に個別に着目し、インビジブルシティとコンベンショナルシティの橋渡し行為として、どのような要素技術が場所別、個人属性別に優れているかの検討を開始する。あわせて、地方部と都市部の格差がこれらの橋渡し行為を通じてどのように変化するかを追跡する。 4)今後デジタルネイティブ層が占める人口構成比が高まった際、それによって等比級数的に生じることが予測される都市へのインパクトに言及する。あわせてそのような状況の中でデジタル基盤に不都合が生じた場合、世界が被ることになる過去には無かったリスクの存在について、その概要を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、研究資料入手のために国内で出張する予定だったが、インターネット上で入手可能になったので国内での出張が不要になったため。
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次年度使用額の使用計画 |
引き続き情報収集、研究資料収集費として使用し、研究を加速させる予定である。
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