本研究では,バーチャルリアリティ(VR)空間を用いた被験者実験を通じて,パーソナルモビリティビークル(PMV)が歩行者流と安全に混在して走行できるための要件の検証を行った. (1)インタラクティブVR歩行システムの構築:VR空間に歩行者およびPMVの動きを再現し,ヘッドマウントディスプレイを装着した被験者がVR空間内を歩き,周辺の仮想の歩行者やPMVと相互にリアルタイムに回避して通行することのできるシステムを構築した.現実とVR空間とで接近するPMVに対する被験者の危険度や安心感の評価を行い,VR空間では接近距離に対する感度は低いものの,被験者の主観的危険度が現実と同様の傾向を示すことを明らかにした. (2)PMVに対する歩行者の主観的危険度モデルの構築:仮想空間において被験者(歩行者)とPMVや周辺歩行者が混在して移動する歩行実験を行い,PMVの性能や歩行者交通量,道路幅員に応じた歩行者の主観的危険度のデータを取得した.歩行者密度やPMVの速度,角速度が主観的危険度に影響を与えることを明らかにした.この結果を用いて,歩行者の行動モデルの1つであるSocial Forceモデルを改良し,PMVの速度や移動方向,相対距離に応じた歩行者の主観的危険度を説明するモデルを作成した. (3)歩行者と共存可能なPMVの要件整理:構築した主観的危険度モデルを活用し,歩行者への接近時に歩行者の主観的危険度の閾値を超えないようなPMVの速度抑制方法や,歩行者交通量と道路幅員を考慮したPMVの速度規制方法についてケーススタディによる検討を行い,歩行者空間に対して追加的にPMVが導入される場合に必要なPMVの機能および道路環境の条件を整理した.
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