研究課題/領域番号 |
16K14325
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
白崎 伸隆 北海道大学, 工学研究院, 助教 (60604692)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 水系感染症ウイルス / 消毒耐性ウイルス / 熱処理 / 塩素処理 / プラック形成法 / PCR法 / PMAxx-PCR法 / 消毒不活化メカニズム |
研究実績の概要 |
本研究では,未だ不明な点が多い消毒処理におけるウイルスの不活化メカニズムについて,ウイルスの感染性を決定づけるカプシドタンパク質のアミノ酸レベルの変性を精密質量分析にて詳細に捉えることにより解明することを目的とした.また,高い消毒耐性を有する遺伝子型を含む複数種のウイルスを消毒処理実験に用い,ウイルスの遺伝子型間,種間での変性の有無,並びに変性箇所の差異を確認することにより,消毒耐性メカニズムについても議論することを目的とした. 本年度は,高い塩素耐性を有するコクサッキーウイルスB5型,高い紫外線耐性を有するアデノウイルス40型の熱処理性及び塩素処理性について,プラック形成法による感染性評価,PCR法による遺伝子定量に加え,光反応性色素PMAxxによる前処理とPCR法を組み合わせたPMAxx-PCR法についても実施し,プラック形成法にて得られた結果と比較することにより,ウイルス不活化メカニズムについて議論した.その結果,熱処理においては,いずれのウイルスについても,プラック形成法にて得られた不活化率とPMAxx-PCR法にて得られた低減率が同程度となったことから,熱によるウイルスカプシドタンパク質の損傷が不活化の主要因であることが明らかとなった.一方,塩素処理においては,プラック形成法にて得られた不活化率が4 log以上の場合には,PMAxx-PCR法による低減率が確認されたのに対し,プラック形成法にて得られた不活化率が3 log以下の場合には,PMAxx-PCR法による低減率は確認されなかった.従って,3 log以下の不活化率が得られるような塩素処理条件においては,ウイルスカプシドタンパク質の損傷以外の要因(酸化や塩素化等)が不活化に寄与している可能性が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,消毒耐性ウイルスであるコクサッキーウイルスB5型,アデノウイルス40型を研究対象とし,プラック形成法による感染性評価,PCR法による遺伝子定量に加え,光反応性色素PMAxxによる前処理とPCR法を組み合わせたPMAxx-PCR法による評価を実施することにより,熱処理及び塩素処理におけるウイルス不活化メカニズムについての議論が展開できたことから,研究計画は概ね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
来年度は,塩素処理に加えてオゾン処理を実施すると共に,精密質量分析を応用することにより,ウイルスカプシドタンパク質の酸化/塩素化箇所を特定し,ウイルス種間,消毒処理間での変性箇所の差異を確認する.
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