研究実績の概要 |
我が国では東京湾、瀬戸内海、有明海を始め各地で貧酸素水塊が発生し、その対策が急務である。しかし現状では、浚渫などの極めて高コストな対策しかないためにほとんどなされていない。そこで本研究では、貧酸素水塊の抜本的な対策として「微生物を”電池(堆積物微生物燃料電池)”として利用可能なシステムを構築し、嫌気状態で発生する電子を溶存酸素の存在する上層の海水中まで運ぶことによって、底質(堆積物)中の酸化還元電位を上昇させ、貧酸素水塊の抑制につなげること」により、原位置にて底質の浄化を行うことのできる全く新しいシステムの開発を行うことを目的とする。最終年度(H29年度)は、以下の2つの項目について実施した。 1.前年度に検討した導電性物質のうちマグネタイト(Fe3O4)の添加による浄化範囲の拡大の検討 2.汚濁の進行が著しい発展途上国タイ、バンコク近郊のマングローブ林にて本法の効果を実験的に確認 実験結果から、 1.については、まず前年度に確認された浄化効果が確かに微生物によるものかを確認するための実験を行った。この実験では、底質の滅菌処理なしの系及び滅菌処理ありの系をそれぞれ設置し、通電期間中の電流密度を比較した。実験結果から、滅菌することにより総電流量が約95%減少したため、電流密度の上昇は微生物の代謝に起因するものと確認された。次に、底質にマグネタイトを添加することで、堆積物微生物燃料電池の浄化範囲を拡大することができるかを実験的に確認した。マグネタイト(粒経45μm以下)の添加条件は0.06vol%, 1vol%, 10vol %, 20vol%, 40vol%である。実験結果から、底質に0.06vol%添加した場合に最も浄化範囲が広がるという結果が得られた。 2.については、マングローブ林にて現地実験を試みたが雨季のため泥の堆積がかなり速く、区割りが維持できず十分な結果が得られなかった。
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