研究課題/領域番号 |
16K14333
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研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
宮内 啓介 東北学院大学, 工学部, 教授 (20324014)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ヒ素 / ヒ酸 / 亜ヒ酸 / バイオセンサー / Rhodococcus |
研究実績の概要 |
土壌由来の細菌であるRhodococcus erythlopolis IAM1399株のヒ素耐性遺伝子群破壊株(以下Δars株)を用いて亜ヒ酸検出系を構築した。Δars株は亜ヒ酸排出ポンプであるArsBタンパク質を生成することが出来ないため、亜ヒ酸を細胞外に排出することが出来ず、数μM(数十~数百ppb)の亜ヒ酸に対して感受性を示す。すなわち、低濃度の亜ヒ酸を菌体に蓄積することが出来ると考えられる。まずはこの株に、亜ヒ酸に応答して転写抑制を解除するArsRタンパク質をコードするarsR遺伝子と、ArsRが結合して転写を抑制するDNA領域(arsRプロモーター領域、以下ParsR)、さらにその下流にレポーター遺伝子として発光タンパク質遺伝子(luxAB)を連結したプラスミド(pKLAParsR3+arsR)を導入した。構築した組換え菌の亜ヒ酸およびヒ酸に対する応答を観察した結果、亜ヒ酸に対しては1 nMまで、ヒ酸に対しては1 μMまでは明確な反応を示した。環境基準は約0.13 μMであるため、亜ヒ酸に関しては感度の問題をクリアできた。ヒ酸に関しては菌体量等の条件の改善により、さらに感度を上げる方法を考える必要がある。 上記システムでは亜ヒ酸とヒ酸の区別がつかないため、サンプル中の亜ヒ酸のみを測定するために、リン酸を過剰に与えることでヒ酸の取り込みを抑えることを試みた。その結果、リン酸を10 mMとなるように加えることで、100μMヒ酸存在下での発光値を1/40に抑えることが可能であった。逆に、ヒ酸と亜ヒ酸を合わせたトータルのヒ素濃度を測定するために、細胞内に入ったヒ酸を全て亜ヒ酸に変換する細菌株の構築にも取り組んだ。Δars株にヒ酸還元酵素遺伝子であるarsCを導入した株を作製した。この株のヒ酸還元活性とこの株を用いたヒ素検出系を29年度に評価する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細菌を用いたヒ素の検出系の原型を構築することができた。亜ヒ酸に対する反応については、環境基準以下を達成できたが、ヒ酸についてはまだできていない。培養の条件を検討する必要がある。 リン酸を添加することでヒ酸存在下での反応を抑えることが明らかとなったが、完全に抑えることができていないのに加え、得られたデータがやや不明瞭である。データの取り直しが必要である。 リン酸還元酵素遺伝子の導入はできたが、その評価までには至らなかった。 以上、研究材料の作製については順調に進んだが、データの採取が予定より遅れているため、上記の評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
現在の系を用いて、ヒ酸に対する感度を上げるための条件検討を行う。初期菌体濃度と培養時間について検討する予定である。 リン酸添加時の発光量のデータを取り直す。リン酸の濃度を変えて実験を行い、最適な濃度を検討する。 菌体内に入ったヒ酸を亜ヒ酸に還元する組換え菌の評価を、ヒ酸還元活性とヒ酸検出活性の両面から検討する。 以上の結果を統合して、定量性を示すことが可能かどうかを検討する。また、リン酸トランスポーターおよびそのプロモーター領域の遺伝子改変も試み、リン酸の添加と合わせてヒ酸の取り込みを制御できるようにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
ヒ酸還元酵素遺伝子を導入した組換え菌の評価を行う予定であったが次年度にずれ込んだため、その実験に必要な試薬類の購入をおこなわなかったのが主な理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
当初計画通りの研究に必要となる予算を執行すると共に、上で述べた実験に必要な試薬類を購入して、前年度おこなえなかった実験を早急におこなう予定である。
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