研究課題/領域番号 |
16K14343
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
持田 灯 東北大学, 工学研究科, 教授 (00183658)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 建築環境・設備 / 地球・都市環境 / 歩行者 / 熱ストレス / クールスポット |
研究実績の概要 |
1.クールスポット(街路樹)のある屋外空間における歩行者が曝露される物理環境と生理量の同時計測 仙台の東北大学キャンパス内において街路上の物理環境と歩行者の人体生理量の同時移動計測を行った。樹木が列植されている経路と、樹木が存在しない経路を測定値として選定し、夏日環境下における歩行者の温冷感・生理量の変化、発汗量の推移についての詳細な測定を行った。 2.人体温熱生理モデルの精度検証 実測調査により得られた物理環境の測定値を用いて、歩行者の生理量の変化を再現するための人体熱モデルの精度検証を実施した。具体的には、対流による人体表面からの熱損失を再現するために、複数の対流熱伝達式を組み合わせた全6ケースの対流熱伝達量予測式を用い、人体生理量予測のケーススタディを実施した。その結果、Gaggeの提案する代謝量を変数とする対流熱伝達式と小野らの提案する気流性状(平均流及び乱れ強さ)を変数とする対流熱伝達式を組み合わせた式を用いた予測結果が最も歩行時の生理量の再現性が高い結果となった。 3.歩行者の人体生理量に基づく新たな屋外温熱環境評価指標の開発 平成28年度に提案した歩行者の熱中症Riskを評価する屋外温熱環境評価手法をさらに発展させ、ある経路を歩行する間の人体生理量が、ASHRAEにて規定される基準値以下で歩行することが可能であるかどうかによって、温熱面で快適に街路を歩行することが可能であるかどうか判定し、街路の温熱快適性を歩行者の生理量から評価する手法を提案した。この評価手法に基づき、市街地の放射解析とCFD解析の連成により得た街路内のポイントごとの温熱環境データと、2.で精度検証を行った人体生理予測モデルを用いて、アーバンクールスポット(街路樹)の配置間隔や環境条件を変更させたパラメトリクスタディを実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成28年度に精度検証を行った人体温熱生理モデルの予測精度をさらに向上させる取り組みを実施できたため。対流による人体表面からの熱損失を再現するために、複数の対流熱伝達式を組み合わせた全6ケースの対流熱伝達量予測式を用い、人体生理量予測のケーススタディを実施した。その結果、Gaggeの提案する代謝量を変数とする対流熱伝達式と小野らの提案する気流性状(平均流及び乱れ強さ)を変数とする対流熱伝達式を組み合わせた式を用いた予測結果が最も歩行時の生理量の再現性が高い結果となった。この結果、例えば、人体生理量のうち皮膚表面温度について、実測値と予測値に最大で約2℃の差があったものが、約1℃の差まで精度を向上させることができた。
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今後の研究の推進方策 |
1.実市街地における生理量変化に着目した熱中症Risk評価 市街地の放射解析とCFD解析の連成により、街路内のポイント毎の温熱環境を把握する。次いで、対象領域での典型的な歩行ルートを選定し、そのルートを歩く人間の生理量を改良を加えた人体熱モデルを用いて再現し、平成29年度に構築した温熱快適性評価手法に基づき判定を行う。 2.熱中症Risk判定結果および温熱快適性の判定結果に基づくアーバンクールスポットの配置計画の検討 1.でRisk判定を行った実街区に対して、最小限の領域への対策で熱中症発症Riskを最大限低下させる或いは、快適に歩行が可能なアーバンクールスポットの配置の検討を行う。また、いくつかの都市の評価事例から、生理量(例えば、深部体温)の推移が熱中症発症条件以下に収まるような、代表性の高いクールスポットの配置間隔を提案する。 3.人間の適応行動を考慮したアーバンクールスポットの最適配置計画の提案 2.で提案されたアーバンクールスポットの配置間隔に対し、暑熱環境下における人間の適応行動の知見を加えることにより、人間の適応行動を加味したアーバンクールスポットの最適配置計画を提案する。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品節約等の努力により多少の残が生じた。当該金額は成果発表旅費等に充当する。
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