研究課題/領域番号 |
16K14347
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
小林 知広 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 講師 (90580952)
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研究分担者 |
Lim Eunsu 東洋大学, 理工学部, 准教授 (50614624)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 風圧係数 / 自然換気 / 通風 / CFD / 風洞実験 |
研究実績の概要 |
当該年度には、LESを用いて乱れによる換気量評価を行う際の解析精度検証を重点的に行った。具体的には室内汚染物濃度に基づくPurging Flow Rate(PFR)、シールドモデルの風圧係数、シールドモデルの建物周辺風速分布の3種類についてそれぞれ風洞実験との比較を行った。PFRは風洞実験ではCO2を用いたトレーサーガス法に対してLESではパーティクル追跡による解析を比較、風圧係数は実験・解析ともに時間平均値の比較、風速分布はI型熱線風速計を用いた実験値との比較とした。この結果、これまでLESで用いてきた解析手法について、開口を有する建物を対象として行った換気量評価と建物周辺の風速分布については十分な精度があり、シールドモデルの風圧係数については若干向上の余地があると示され、格子解像度を向上するなどの課題を示した。 また、前年度に示した時間平均値の風圧係数差と換気量の関係についての情報をより充実すべく、より多くの開口間風圧係数差の条件を追加してLESの解析を行った。具体的にはシールドモデルの開口部にすべり出し窓を想定した羽根板を設置して条件を増やし、基礎データの充実を図った。 さらに、申請時の研究計画でも記していた「従来手法の適用可能範囲を明らかにする」項目についても追加検討を行った。前年度から単室を対象に風圧係数差が概ね0.1以下という適用可能範囲を示してはいたが、より現実的な状況を想定して間仕切りを介して複数の室が連続して配置された条件での解析を行い、これらの条件では実質的な換気量であるPFRは風圧係数差が0.1を上回っても精度が不十分であるという課題を明確に示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで抜け落ちていた風洞実験による緻密な測定を要する解析精度の検証は本研究課題で解決をしなければならない重要な項目であり、これを丁寧に行うことができた点は申請時に掲げていた研究計画通りの進展が得られていると言える。また、より現実的な複数室条件での従来法適用範囲を明確に示すことができた点については申請時の計画以上の成果と言え、研究全体としては概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
解析精度検証を十分に行うことができたことから、今後はLESを用いたパラメーター解析を行う所存である。本研究では実質的に汚染物排出に有効に働いた換気量であるPFRを濃度に基づき算定して評価をしているが、同時に開口面の風速に基づく通気量であるAir Flow Rate(AFR)の解析も行っている。従来手法は後者のAFRを簡易に予測する手法であり、風圧係数差が小さな条件では精度が悪化することがそもそもの問題であるが、平成29年度に示した「混合」と「脈動」に基づく通気量の簡易予測式理論に基づき、今後は予測されたAFRに換気効率を示す指標を導入して最終的に重要なPFRを簡易に予測する手法の検討を行う。
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