住居取得時に将来を含めた住生活に関する展望のないままに意思決定することの悪影響が、その後の住生活において様々な形で現れることが懸念されている。 そこで本研究課題では、住居取得者への調査を実施し、上記悪影響の実態を把握する(課題Ⅰ)。また、この問題を解決するため、建築分野において提案され実務的にも活用が進んでいるニーズ把握手法である「評価グリッド法」をベースに、キャリア教育分野における手法やノウハウを取り入れ、住居取得時に将来展望を含めてニーズ検討を行うために役立つ手法の研究開発を行う(課題Ⅱ)。さらに開発した手法を現実の住居取得場面において実務的に試行適用し、PDCAサイクルに基づき実践的に成果手法の改良やバリエーション整備をはかる(課題Ⅲ)。 本年度の主な研究実績は,まず課題Ⅰに関して、住居取得・入居後数年以内の都市居住者を対象に2018年度に実施したインターネット調査の回答者を対象に、縦断調査を実施した。また、これまでの調査データを用いて住居取得時の検討状況がその後の住生活・居住満足・幸福度等に与える影響を分析した結果を査読論文として投稿中である。 課題Ⅱに関しては、評価グリッド法の結果を項目間のラダーリング頻度のデータからDEMETEL法とMDSを応用し、項目の空間布置を得る方法を考案し、Excel上で動作するプログラムを試作した。 課題Ⅲに関しては、住宅設計に関わる建築実務家を対象に、これまでの成果となる要素技術等を紹介し、実務適用を呼びかけるとともに、意見・要望などをヒアリングした。今後、実務場面における試行適用を行う事例がふえてくることを期待している。
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