研究課題/領域番号 |
16K14356
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
三輪 康一 神戸大学, 工学研究科, 教授 (10116262)
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研究分担者 |
末包 伸吾 神戸大学, 工学研究科, 教授 (10273757)
栗山 尚子 神戸大学, 工学研究科, 助教 (00362757)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 参加型景観 / 情景 / まちづくり / 景観評価 / 空間像 / 類型化 / オープンガーデン / オープンカフェ |
研究実績の概要 |
1)〈参加型景観〉の可能性をもつ行為・活動の収集: 〈参加型景観〉として表出する組織的活動(日常,非日常)による参加型景観事例候補と個人的行為(意識的・無意識的行為)による参加型景観事例候補の収集を行った.収集した事例については,個々の事例を評価する評価シートを作成して,とりまとめた.評価シートの作成にあたっては,位置,参加主体などの基本情報と,景観構成要素と参加タイプを確認する基礎データ,さらに,「場」「行為」「成立条件」に関わる情報を性格評価項目として記載することとした.収集した事例は110件である. 2)〈参加型景観〉の類型化と成立条件の設定 以上の行為・活動事例について,その内容(構成要素),観察者との関係により類型化を行った。その結果,参加型景観には大別して3つパターンが存在することがわかった.その3つのパターンは,モノ・空間(環境)に働きかける「主体A」,環境の一部となっている「主体B」,そしてそれらの「観察者」という三者それぞれの立場の関係によって類型化することができる.さらに観察者が対象となる空間の内外どちらに存在しているかによって前述の3つのパターンから細分化して,6つのパターンに当てはめて考えることができる. 3)以上の分析作業を踏まえて,景観計画,景観まちづくりに関する経験をもつ専門家(研究者,建築家,造園・都市計画家,行政担当)による「参加型景観研究会」を立ち上げた.この研究会を現在までに2回開催し,個々の事例について議論し,総合的な視点での検証を行った。それをもとに〈参加型景観〉の成立条件を検討した.以上から,詳細調査の対象事例として,オープンガーデン,オープンカフェの二つを抽出した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調に進展していると判断した理由は,事例収集において,多様な参加型景観の候補となる事例が収集できたことであり,一方,参加型景観研究会で参加型景観の概念を議論し,応じて再度分析の精度を高めることができた.これによって,詳細調査の対象事例として,オープンガーデン,オープンカフェの二つの事例を抽出することができた.
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今後の研究の推進方策 |
1)〈参加型景観〉の表出意識度の分析:参加型景観には,参加(景観として表出)する当人が景観に影響を及ぼすことを自覚している意識的参加と景観への影響には無自覚的な,無意識的参加があり,これを「表出意識度」として,詳細分析対象事例であるオープンガーデン,オープンカフェの主体者へのヒアリング調査によって明らかにする予定である.また,それが情景を生み出すこと,景観まちづくりを推進する意識に連動すること(持続性・発展性)を検証する。 2)事例における情景評価分析:参加型景観として抽出した景観の画像をつかってそのシミュレーション評価を行う予定である.第1に,活動や行動が行われる舞台をフレーム(ベースの景観)とし,フレームのみの場合と〈参加〉が生じた場合に表出する景観の比較評価(二次評価)を行い,参加型景観の実質的な効果を明らかにする.第2に,参加型景観から情景を生み出す効果を,①行為・行動と空間との調和の関係,②参加型景観の質的合理性,妥当性あるいは蓋然性,③参加型景観のもつ意味性による評価項目を指標化し,これら情景効果指標と,表出意識度との相関を分析・考察する。以上の評価指標による参加型景観事例の評価実験を,「参加型景観研究会」のメンバーを被験者として実施する.また,評価された事例の類型分析結果をもとに研究会で定性的,総合的に議論することで,指標の有効性を検証する. 3)〈参加型景観〉を活かした景観政策的提案の検討:参加型景観を景観政策として展開していくために,ハード手法としての参加型景観の場の形成,すなわち,活動とその舞台となる空間とのマッチングをはかること,また,ソフト手法としての参加型景観につながる行為・活動を促進するための誘導手法(ガイドライン)が考えられる.〈参加型景観〉いずれも類型化による参加型景観の特性に応じた手法の検討を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
事例収集において,多様な参加型景観の候補となる事例が収集できたことと,参加型景観研究会で参加型景観の概念を議論し,応じて事例の分析の精度を高めることができ,詳細調査の対象を特定化できた.これによって,当該年度,予定していた行動観察調査を次年度に先送りできた.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は,翌年度分と合わせて,詳細調査において,行動観察調査,ヒアリング調査,アンケート調査に係る人件費として使用を計画している.また,旅費は,当該年度の成果の学会発表のための旅費として使用を予定している.
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