本研究は、人口縮退社会の進行や巨大災害による地域社会の崩壊が危惧される現代社会において、農村が持続、復元する糸口を、過疎集落・被災集落の現実(実体)の中からそのヒントを抽出し、新たな地域、居住、計画に関する概念・理論を構築したいという視座から、研究を進めた。 過疎集落・被災集落に対しては、能登半島地震被災集落の研究を科研・研究成果公開促進費・学術図書(代表山崎寿一)による『復興集落の持続力とモデル性』をまとめる過程においての補足調査も合わせて、イエと集落の復興・持続の原動力=復興力について考察した。 昨年度に引き続き、離島において移住者の増加で注目されている沖縄県石垣島白保集落における現地調査を実施した。特に、石垣島全体の移住者について、地区別特性、集落の空間構成と居住動向、白保集落の移住者の住宅選定とコミュニティ、地域づくりに関する調査を行った。成果の一部として、明治期から現在までの変容の実態、地域住民の世帯分離・Uターン者と移住者の居住特性について学会で研究発表を行った。 研究のまとめとして、限界集落や被災集落の消滅が危惧され半島や離島、奥地限界集落が現在も存続している実態を調査し、高齢者・被災者の居住とコミュニティの持続を支えている「拡大家族」「拡大集落」の存在、二地域居住や移住といった新たな居住スタイルの出現が、地域社会の復興・持続の原動力=復興力になっていることを明らかにした。また、特に、移住に関しては、移住者のライフスタイルに基づいた段階的移住の存在とそれに合わせた住宅の選定がみられ、コミュニティ・地域づくりとの関係に特徴があることが示唆できた。これらにより新たな農村計画の可能性を追求した。
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