研究課題/領域番号 |
16K14358
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
徳尾野 徹 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (80237065)
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研究分担者 |
横山 俊祐 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 教授 (50182712)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 登録有形文化財 / 住宅 / 個人所有 / 公開 / 活用 / 保全 / フィールドミュージアム / 住み開き |
研究実績の概要 |
全国の個人所有の登録有形文化財住宅の保全と公開・活用実態を把握するために、個人所有者を対象としたアンケート調査を実施した(回収率41%・365件)。補足としてヒアリングも10事例行った。 全体の半数近くが公開・活用経験があり、現住(主住居として使用)でも4割が公開・活用の経験がある。現住で公開・活用経験ありのうち2割強は公開のみで、8割弱は居住以外の活用を行っている。活用内容は、大空間にできる続間等での展覧会やコンサートが多い。一方で店舗・事務所等の商業的活用は少ない。 現住の公開・活用のきっかけの特徴は、「見せて欲しいと頼まれた」「登録有形文化財になった」といった第三者の要望や評価であり、来訪者もそれに対応して「知人友人」「建物に関心のある人」が多い。登録文化財登録理由は、「第三者に勧められた」が最も多い。その内訳は、自治体からの要請に加え、現住では「建築関係」つまり建築士等からの勧めが多い。現住では住環境維持の屋根・外壁工事や耐震補強といった工事の機会が多く、そのことが「建築関係者」と出会う契機となっている。 公開・活用の障害は、現住では「住まいとして使っている」が多いのは当然であるが、「運営を担う人がいない」「破損等のトラブルが心配」「改修が必要である」「費用がかさむ」は非居住より少ない。現住している所有者らが運営を担い、見守り、そして建物の維持管理により、公開・活用に当っての特別な工事が不要となり、費用を掛けずに実施できる。一方、運営において、所有者らへの過度の負担が課題となる。 多くの登録文化財住宅が住みながら公開・活用を行っている。住むことは、建物の継続的な維持管理へと繋がり、その過程で建築専門家との出会いが生じる。そしてその出会いが登録文化財への登録や公開・活用に繋がっていく。また、身近な友人・知人のニーズ把握し易く、より積極的かつ効果的な運営が可能となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
文化庁の国指定文化財等データベース(2017年4月19日現在)において登録有形文化財住宅は1,693事例(4,897件)あり、そのうち個人所有かつ主屋が残存(蔵だけ等は除外)のものは1,016事例と6割を占める。その所有者を対象にして郵便によるアンケート調査をしたところ回収率41%(不着128、辞退3、有効回答365)と、この種の調査としては非常に高い数値であった。保全と公開・活用に対する個人所有者の関心の高さが伺える。また、登録有形文化財所有者関係団体からの依頼により、公開・活用事例の紹介を中心とした講演を複数回行った。
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今後の研究の推進方策 |
これまで地元の大阪圏以外の公開・活用事例の情報を把握することが難しかったが、アンケート調査により各地の情報を収集することができた。今後は大阪圏以外の積極的公開・活用事例の個人所有者に対するヒアリングや現地観察調査を行う。また、登録有形文化財候補の掘り起こしや登録作業の支援、既に登録している文化財住宅に対しては、公開・活用の提案などより実践的活動を展開していく。
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