本研究では、都市空間を高齢社会に対応した構造へと転換し、高齢者の移住定住によって安心で豊かな暮らしを実現してゆくための方法について検討を行うために研究を進めた。本研究の調査および分析については平成30年度までに完了していたが、研究成果のとりまとめにおいて移住者に対する個人情報の取り扱いに関して調整が必要になったため、成果のとりまとめのみを行った。 首都圏郊外の高齢化が進む戸建住宅団地において全戸を対象としたアンケート調査のとりまとめを行い、若年層の多くは定着している一方、中高年層は生活に不満を感じ・転居を希望している世帯が全体の約半数もいることなど、定住環境に課題があることが明らかとななった。定住意向を持つことと実際の定住環境があることは同義ではなく、とくに高齢者の生活環境には課題が残っていることが明らかとなった。 若年層、老年層を問わず移住者が増加している離島においては、移住者が受ける支援の内容に応じた移住定住意向の変化について分析およびとりまとめを行った。移住検討段階において、移住後に集落から受けることを期待していた支援と、実際に受けられた支援の関係を調べることで、必要な支援、期待された支援が移住者に届くことの重要性を指摘した。離島などの地域においては、地域や集落との関係構築が定住環境にとって重要であることが明らかになった。そのため、移住前に正確な情報が提供されることの必要性と、受け入れる集落の体制構築が定住環境の構築にとって重要となることが示唆される。
|