障害の重度重複化や医療的ケアを必要とする児童生徒(以下、医ケア児)が増えつつあることを踏まえ、本研究ではこの「医ケア児の学びの場」を研究対象とした。特別支援学校および公立小中学校において医ケア児に対する施設環境改善の実績とその評価(ハード面)、また教職員自ら設えを整えたり運用上工夫して施設利用している実情(ソフト面)を捉え、医ケア児の学びを保障する教育環境整備基準を提示することを目的とした。 研究方法は、全国特別支援学校肢体不自由教育学校長会の協力を得て、全国の肢体不自由教育部門を有する特別支援学校281校を対象とした学校長に対するアンケート調査のデータを分析対象とした。有効票数は160 票(56.9%)である。また国内外(国外:イギリス、デンマーク)の特別支援学校および通常学校のヒアリング調査を併せて実施した。 研究成果として、医ケアのニーズが高い特別支援学校においては全国アンケート調査結果より、学習・生活拠点である教室にみられる課題、医ケア種別によらない医ケア全般に渡る空間・設備の整備課題(特に医ケア室・トイレ・給湯設備について)、医ケア種別や医ケア児生の心身状態と関連した課題(特にランチルーム・トイレ・空調管理・電源確保について)を明らかにし、各校の学校属性や今後の動向に応じて、改修や改築時にはこれらの施設整備課題を適用・応用していくことが重要であることを示した。 また公立小中学校においては事例調査より、限られた環境の中でも学校看護師の複数配置、および医ケア児生専用の室を整備することにより、各種医ケアに対応している実態を明らかにした。これは他校での医ケア児生受入れにあたって参考事例となる。 国外調査においても医ケア対応の状況はみられたが、日本ほど医ケアニーズが顕著ではなく、日本の方が体制および施設環境の双方において、様々な対応が検討されていることが捉えられた。
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