本研究では、実大火災実験を縮小模型で再現することで、縮小模型を用いて現実の火災の延焼性状を評価可能であることを示すとともに、現代の市街地の火災安全性を把握することを目的して、過去に行われた実大火災実験の一つとして過去に建築研究所が実施した在来木造2階建建築物の火災実験を対象として選定し、1/10スケールの縮小模型による実大火災実験の再現可能性の検討を行った。建物模型による再現実験に先立って、建物模型の仕様を選定するための部材実験及び区画実験を行った。 部材実験では、実大実験で用いられた外壁、間仕切壁等について、仕様の確認と各部材の防耐火性能確認のための小型炉を用いた加熱実験を行い、ケイ酸カルシウム板や石膏ボード単板や断熱材を充填した木壁の確認を行った他、一部の条件では、縮小模型での時間スケールを考慮して標準加熱より進行速度を早く設定した加熱曲線を採用した実験を実施した。 区画実験では、実大実験建物の1階の出火室を再現した小規模模型を作成し、開口部材の熱崩壊・脱落による室内延焼及び外部への噴出火炎の形成過程を再現するための開口部材等の仕様確認を行った。併せて、室内収納可燃物の仕様の確認を行った。 建物模型による再現実験では、部材実験及び区画実験の結果を踏まえて、模型仕様を確定し、燃焼実験を実施した。その結果、開口部材の材質及び材厚については熱物性値の相似性ではなく室間延焼時間の相似性を満足するように選定することで室間延焼の経過を再現できる可能性を確認した。一方で天井の燃え抜けが生じず、また、模型では実大実験より温度上昇が緩慢で最高温度が低くなる傾向が確認された。 以上の結果を踏まえて、縮小模型による実大火災の再現のための実験手法及び防火構造の建築物や準耐火建築物が集積する現代市街地における火災安全性の実験的把握の方法及び課題について整理した。
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