ノイトラの『Survival Through Design』に示された全論考を対象に,主題となる言説を抽出し,その主題のキーワードをいくつかの項目として示し,これらを主題の内容の階層構成という視点で分析し,それに即して,ノイトラの『Survival Through Design』における建築思想を,総体的かつ相対的に把握することを目的とするもので,特に本稿ではその主題の一つ,彼の時代認識に関する思想の特質を検討する.筆者は,これに準じた視点や分析方法により,示したシンドラーの建築思想を,彼の時代認識や空間構成の理念や方法,彼が提起した「空間建築」について検討を行なってきた.本研究は,こうしたシンドラーとともに生涯に渡りロサンゼルス近代建築を先導したノイトラについて,シンドラーの建築思想の分析の視点や方法に準ずることで,ノイトラの建築思想の特性の一端の開示だけでなく,将来的にはシンドラー等との比較検討を行い,広くロサンゼルス近代建築の建築思潮として,その特性を導くことも企図している. 『Survival Through Design』から,ノイトラの時代認識に関する言説,空間概念,さらに建築家の具体的展開としての方針や手法にいたる,彼の論考から主題となる言説を抽出し,主題のキーワードを,KJ法を参考に,いくつかの項目として整理するとともに,意味の階層構成という視点で検討した.抽出した主題は,章毎にナンバリングし示す.これにより48章から1267の言説が主題として抽出され,それらの主題に基づくキーワードは61の項目に整理され,主題の内容を意味の階層性の視点から検討した結果,全体では,第1から第5水準の項目に分類された.中でも,第1水準としては,「時代認識」,「生理学的空間(biological space)」,「建築家としての職能」の3項目が導かれた.
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