本研究は、日本と中国における伝統的な木造建築に関する歴史的な用語の比較を通して、東アジアにおける建築文化の特質を見出す研究手法の創生を目指した。 両国の古建築用語の相互訳をおこなうことで、共通点および各国の特質を見出し、さらに英語訳をおこなうことで、用語持つ意味を客観的に評価し、さらに、翻訳を通じた問題意識の形成・蓄積を通じて、論点を抽出した。 最終年度となった2018年度は、これまで相互訳および英訳を推進してきた中国の建築用語のうち、主体構造部分にあたる「大木作」に関連する用語について、再度、系統的な把握をし直すことで、論点の抽出をおこなった。一連の作業にあたっては、建築史を学ぶ学生アシスタントの協力を得ることで、作業の効率化と精度の担保をはかった。 また、特に木造建築の構造部材において重要な役割を果たす「貫」などの軸部を中心に論を深め、研究手法としての有効性を確認することができた。 今後、本課題で獲得した方法論に基づき、新たな学問領域の構築に臨みたい。加えて、本課題の推進を通して、構築してきた国際的な研究組織についても、継続して発展させることで、新たに構築する学問領域を日本のみならず、東アジア各国をはじめ、より広範に適応させてゆきたい。
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