今後の研究の推進方策 |
今後は、熱伝導度(κ)、ゼーベック係数(S)の測定を行い、電気伝導度(σ)の測定結果と合わせてZT値の評価を行う。ここで、Z=(σS2/κ) である。電気伝導度とゼーベック係数は真空理工製のゼーベック係数測定装置(電気伝導度と同時測定可能)を用いて測定する。この装置は東大新領域研究科木村薫研所有のもので、借用する。熱伝導度はやはり木村研所有の熱拡散率測定装置を借用して測定する。 また、当初計画に入れていなかったが、Pb-(Bi,Sb)-Te系で同様な実験を行う。現在までに約40種の系で3次元トポロジカル絶縁体の形成が報告されているが、転位状態が形成し得るトポロジカル指数をもつものは限られており、Bi-Sb系以外ではPb-(Bi,Sb)-Te系がほぼ唯一の系である。Bi-Sb系にとどまらず、この系でも実験を行うことは有意義である。まずブリッジマン法を用いて単結晶を作製する。Pb-(Bi,Sb)-Te系は包晶反応で生成するため大きな単結晶を作製することが困難である。できるだけ単結晶のサイズが大きくなるように組成と引き下げ速度を最適化する。作製した試料をX線ラウエ法によって単結晶性を評価し、粉末X線回折法により結晶の質を評価する。またEPMA法により組成分析する。状態図から液相組成と析出する固相組成がかなり離れており、得られた単結晶に濃度勾配が生ずることが予測される。目標とする組成となっている箇所を切り出して、塑性変形による転位の導入、電子顕微鏡を用いた転位の型および転位組織の評価、電気伝導測定をBi-Sb系と同様に行う。 得られた結果を国内外の学会で発表し、論文にまとめる。
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