研究課題/領域番号 |
16K14376
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研究機関 | 公益財団法人若狭湾エネルギー研究センター |
研究代表者 |
中嶋 英雄 公益財団法人若狭湾エネルギー研究センター, 所長 (30134042)
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研究分担者 |
安永 和史 公益財団法人若狭湾エネルギー研究センター, 研究開発部, 主任研究員 (20404064)
鈴木 耕拓 公益財団法人若狭湾エネルギー研究センター, 研究開発部, 主査研究員 (40705612)
前川 禎通 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 先端基礎研究センター, センター長 (60005973)
石神 龍哉 公益財団法人若狭湾エネルギー研究センター, 研究開発部, 主任研究員 (10359242)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | エレクトロマイグレーション / アルミニウム薄膜 / 強磁場 / 原子輸送 / 拡散 |
研究実績の概要 |
集積回路デバイスの金属配線に大電流を流した場合、その金属配線が断線し素子が不良になってしまうことはよく知られている現象でエレクトロマイグレーションと呼ばれている。薄膜におけるエレクトロマイグレーションのメカニズムは次のように説明される。薄膜内に電流が流れると、電流は金属原子に散乱し運動量を与えてElectron wind forceを付与する。その結果、金属原子は電子の流れる方向((カソードからアノード方向)に移動していき、カソード側にボイド、アノード側にヒロックやウイスカーを形成する。これを抑制するために強磁場を負荷して異常Hall効果により電流に曲がりを生じさせ金属原子の移動を阻止することができればエレクトロマイグレーションによる故障を大幅に低減させることができるという着想の下に、強磁場によってアルミおよび銅薄膜のエレクトロマイグレーションを抑制させる手法を確立することが本研究の目的である。 10テスラの強磁場を発生できる現有の超電導マグネットの中心ボアにエレクトロマイグレーションの試料ホルダーを組み入れた。エレクトロマイグレーションの試料ホルダーはガラス基板上にスパッタリング法によって作製されるアルミニウム薄膜(膜厚0.2~0.3μm)が磁界に平行あるいは垂直方向になるように配置された。薄膜の両端には直流が通電できるような電極を設けた。エレクトロマイグレーションを起こすためには1平方センチメートル当たり1,000,000アンペア程度の巨大電流密度を通電する必要があるが、それに伴って薄膜にはジュール熱が発生する。そのため、試料の中心部の3か所に熱電対を取り付けて温度分布を測定した。超電導マグネットを稼働し中心磁場中に試料ホルダーを設置した場合、磁場に平行および垂直方向ではそれぞれ磁場分布は±3%および±1%以内で均一であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現有の強磁場を発生できる超電導マグネットは別の目的の実験に供されていたので、平成28年度には十分なマシンタイムが確保できなかった。そのため、まだ強磁場を用いたエレクトロマイグレーションの実験を遂行していないが、平成29年度にはその遅れを取り戻すことができるように超電導マグネットのマシンタイムを十分に確保した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究はアルミニウムおよび銅のエレクトロマイグレーションに及ぼす強磁場の影響を調べるために今後、4つのプロセスを遂行する。(1) Ptをドーピングしたアルミニウムおよび銅薄膜の作製、(2)強磁場下でのエレクトロマイグレーション実験、(3)エレクトロマイグレーション後の薄膜試料の構造・形態観察および組成分析、(4)理論的考察である。 当初の研究推進方策に大きな変更点はない。
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次年度使用額が生じた理由 |
試料の熱処理のためにグラファイトチューブを複数本、購入したが、端数が出てしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額の2098円は化学薬品の購入に充てる。
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