研究課題/領域番号 |
16K14377
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
片瀬 貴義 北海道大学, 電子科学研究所, 助教 (90648388)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 酸化物エレクトロニクス / 薄膜トランジスタ / 電気化学 / スピントロ二クス |
研究実績の概要 |
本研究では、室温で電気的に磁性と伝導性を同時に不揮発変調可能な新機能スイッチングメモリ素子の開発を目的とし、水に含まれる電気化学的に活性なH+とOH-イオンを使って、ペロブスカイト酸化物の酸素濃度を自在制御可能な薄膜固体デバイスの実証を目指している。具体的には、酸素濃度変化によって反強磁性絶縁体と強磁性金属を変換可能なコバルト酸ストロンチウム(SrCoOx)に着目し、酸素空孔の1次元チャネルを有するSrCoO2.5エピタキシャル薄膜上に、含水多孔質ガラスをゲート絶縁体とする薄膜トランジスタ構造を作製し、室温で、ナノ平行平板間に電圧を印可して生じるH+とOH-イオンを利用して、SrCoOx薄膜の空孔チャネルに酸素イオンを脱挿入することで、反強磁性/絶縁体-強磁性/金属の不揮発な可逆制御を行う。H28年度は、アルカリ水溶液を閉じ込めた多孔質ガラスを実現するために、Naイオンを含む絶縁体材料のNaTaO3に着目し、多孔質薄膜化させることでナノピラー構造のアモルファス薄膜を実現し、NaOH水溶液を含む固体薄膜の作製に成功した。次いで、SrTiO3(001)基板上にエピタキシャル成長させたSrCoO2.5薄膜上にアモルファスNaTaO3ナノピラー薄膜をゲート絶縁体とする薄膜トランジスタ構造を作製し、室温・大気中でゲート電圧を印可してSrCoOx活性層を酸化・還元したところ、絶縁体から金属への変化と同時に反強磁性から強磁性への可逆変調に成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、室温で電気的に磁性と伝導性を同時に不揮発変調可能な新機能スイッチングメモリ素子の開発を目的としており、初年度で提案通りの動作実証に成功し、磁気信号と電気信号を同時に制御し記憶する情報記憶デバイスの高容量化に向けた新しいアプローチを提案したと考えている。H29年度は発展課題として、本提案デバイスの動作特性の大幅な向上に向けた動作メカニズムの学理構築を目指す。
|
今後の研究の推進方策 |
現時点での反強磁性/絶縁体-強磁性/金属の切替には電圧3Vを2-3秒間印可する必要があり、情報記憶デバイスに応用するためには、デバイス動作の大幅な改善に向けた動作メカニズムの学理構築が必要である。デバイス動作特性には、ゲート絶縁体に用いるアモルファスNaTaO3薄膜のイオン伝導度とSrCoOx活性層の酸素空孔一次元チャネルの方位が大きく影響すると考える。そこでH29年度は、アモルファスNaTaO3薄膜のNa濃度を変化させ、薄膜中に内包されるアルカリ水溶液のイオン伝導度を制御し、それに伴うデバイス動作特性の変化を系統的に調べる。また格子定数の異なる種々のペロブスカイト酸化物単結晶基板を用いて、SrCoOxの酸素空孔一次元チャネルの配方関係を制御し、デバイス動作の高速化を目指す。
|