研究課題/領域番号 |
16K14380
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
舟窪 浩 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (90219080)
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研究分担者 |
山田 智明 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (80509349)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 電気熱量効果 / 酸化ハフニウム / 強誘電体 |
研究実績の概要 |
電気熱量効果とは、電界印加を除去すると分極がランダムになり、エントロピーが低下することで強誘電体のみに発現する冷却現象である。この効果は電圧駆動であり電流が流れないため、消費電力はほぼゼロエミッションに等しいという特長を持つ。冷却効果は強誘電体への印加電界に比例して大きくなるが、これまで大きな電界印加が可能な強誘電体薄膜は存在しなかった。本研究の目的は、大きな電界印加が可能なHfO2基強誘電体極薄膜を用いて、これまで得られなかった巨大な電気熱量効果を発現させることである。HfO2基強誘電体膜について、研究代表者が見出した既存の強誘電体にない特長に着目し、これまで実用上は全く顧みられてこなかった電気熱量効果応用を目指す研究であり、着想が非常に独創的である。本年度は以下の成果を得た。 1)強誘電相は、製膜温度を上げて直接結晶化して作製した場合と、室温合成後の熱処理で作製した場合を比較すると、どちらもほぼ同じ強誘電性が得られる。一方、絶縁性から比較すると、室温合成の方が比較的高耐圧の膜が再現性良く得られる傾向が見出された。 2)PUND法を用いて、分極―電界特性の温度依存性から、電気熱量効果を見積もった。その結果、室温より低温になる程、大きな温度変化が得られることが示唆された。この原因については、より詳細な検討を今後行っていく予定である。 3)電気熱量効果の直接測定を目指して薄膜表面に白金細線抵抗温度計を設計・作製した。今後、電場印加・除去時の温度変化の測定と評価を試みる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
室温合成とその熱処理の比較的簡便なプロセスで、高耐圧の膜が作製できることが明らかになったため、安定して測定ができるようになった。また、PUND法を用いた間接評価手法を確立したことで、より正確な電気熱量効果の評価が可能になった。
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今後の研究の推進方策 |
より大きな電気熱量効果が得られる組成を今後探索していく予定である。また、構造上の工夫と測定手法の改善も合わせて行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
作年度は評価方法の確立に時間を使ったため、系統的に膜厚や組成を変化させた膜を多く作製しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
評価方法は確立しつつあるので、本年はより多くの薄膜を作製し、評価を行うことで当初の目的を達成する。
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