研究課題/領域番号 |
16K14383
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
田中 諭 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (20324006)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | セラミックス / 構造・機能材料 / 紫外線硬化 |
研究実績の概要 |
強磁場中アデティブマニュファクチャリングでは,紫外線照射前の配向挙動は重要な因子である。そこで本年度は昨年度に引き続き,非鉛圧電材料として期待されるニオブ酸ストロンチウムナトリウムを原料に用いて,配向挙動の理論,具体的には配向の速度および配向時間について検討を行った。その他,配向シートの異方性焼結についての解決策についても検討を行った。 まず配向理論を検討したところ,スラリーの粘度と磁束密度の2乗の関数で整理できることが予測できた。そこで実験条件を整えて検討を行った。今年度はスラリーの固体含有率を一定にして,磁束密度と温度を変化させて配向を行った。配向性はXRDを用いてのLotgering因子の妥当性についてLocking Curveによる検討も行った。実験結果では,配向性の時間依存性を確認し,その時間変化から配向速度を算出し,さらには配向時間も算出した。スラリーの粘度および磁束密度に対して整理すると,理論で予測される結果と概ね一致した。これより,配向性をスラリーの粘度と磁束密度から凡そ推測できることが明らかになった。ただし,配向時間が長時間化する条件では実験結果での配向速度は小さくなる傾向がみられた。 配向体の異方性焼結については,配向方向毎の焼結速度を求めた。焼結時の様子を長焦点カメラを用いて観察を行った。さらには熱機械分析によって焼結速度を求めた。その結果,c軸方向の優先的な焼結の後,さらに高温でa軸方向の焼結が起こることが分かった。配向体では従来よりも高温になるが,配向しにくいと思われた方向についても焼結が進むことが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
すでに紫外線硬化樹脂を用いた高濃度スラリーを調製し,分散材や硬化剤の影響を検討し,45体積%以上,最大55体積%のスラリーを調製できている。磁石内で粒子を配向後,紫外線を直接照射させて固化でき,さらには焼結も行うことが可能となった。XRDで高い配向も確認することができた。 配向挙動の速度論的な検討について昨年度から開始し,昨年度は実験結果からの傾向のみの説明であったが,今年度は予定通り配向速度と配向時間を理論的に導出するとともに,実験においても確認することができた。配向時間は磁束密度が10Tでは数秒で完了する。6Tにおいても数十秒で配向が完了する。なお,実際の配向体においては成形時にLotgering因子で0.5もあれば焼結で配向は0.9程度まで上昇することから,配向に必要な時間は十数秒で十分であると考えられる。 昨年課題であった配向シートの焼結についても焼結挙動を高温まで検討することでその解決方法を見出すことができた。通常よりも高い温度であるが,a軸方向についても緻密化が起こることが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
配向挙動の速度論は概ね導くことができた。配向によって焼結が進まない方向についても現在扱う物質については焼結速度の異方性を調べることで解決できる。 これからの方向性の一つはバルク体への展開がある。配向シート内での配向分布に不均一性があると,焼結による不均一性を発生しかねない。これまで扱ってきた圧電用のニオブ酸ストロンチウムナトリウム以外について,例えばアパタイトなどの屈折率の比較的低い物質において配向シートを作製してその積層化について検討する方法が考えられる。
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