本研究課題ではSiO2粒子を用いた泳動電着法によって構造色コーティング膜を形成させる手法を検討した。前年度まではアノード型の泳動電着で行ってきたが、アノード型電着では被塗物が金属の場合に腐食がおこる懸念があった。また、これまでに得られているコーティング膜は基板と粒子、粒子間の接着力が弱く、容易に剥離してしまう欠点もあった。 そこで平成29年度は、正電荷を有する物質を用いることでカソード型電着による構造色コーティングを試みた。正電荷を有する物質として、カチオン性高分子電解質であるポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(PDDA)を用いる方法について検討を行った。従来は容易ではなかった構造色の発色の角度依存性の制御を電着条件の調整で実現することを試みた。さらに、作製したコーティング膜の耐摩擦特性をアノード電着で作製したものと比較し、その向上を図る検討を行った。 PDDAを用いるとSiO2粒子およびカーボンブラック粒子の表面に吸着し、粒子表面電荷が正に反転することで、カソード型泳動電着による構造色コーティングが可能となった。また、分散媒のpHの違いでコーティング膜における粒子集積状態を制御することができ、角度依存性のある構造色膜と角度依存性の小さい構造色膜を作り分けることができることも明らかになった。 次に得られた膜の耐摩擦特性を評価した。アノード電着により作製したものは磨耗試験において、1度の摩擦で全ての膜が剥離してしまい、耐摩擦特性は極めて乏しかったが、PDDAを用いたカソード電着により作製したものはそれよりも耐摩擦特性の向上がみられた。すなわちPDDAが電荷を反転させる役割だけでなくバインダーとしても働いていることが明らかになった。
|