研究実績の概要 |
MAX相と呼ばれる金属複炭化物から、原子層Aを選択溶解することで生成する金属炭化物ナノシートは、MXeneと呼ばれ、電気化学・センシングデバイスへの応用が期待されている。代表的な組成はTi3AlC2からAlを選択溶解したTi3C2Tx(Tx : 表面官能基)である。Mは前期遷移金属元素のNb, Vなどに置換することができるとされるが、それ以降の遷移金属を主要成分とするMAX相、MXeneの報告はごく少数に限られている。本研究により、従来M元素としての報告例のないWを導入したTi3-xWxAlC2の組成を持つMAX相を前駆体とすることで、Wを副成分として導入したMXene : Ti3-xWxC2Txの合成に成功した。Ti3C2Txの表面にWが部分置換することで、終端する表面官能基の脱フッ素化が容易であることが分かった。 MXene系の前駆体から、硫黄と炭素からなるA/X複合材料(S/C複合材料)の合成、構造再評価およびLiおよびNaイオンの吸蔵性能評価を行った。Naイオンとの反応では、Liイオンとの反応に比べ、より硫黄の溶出が起こりやすいことを明らかにした。 また、MXene特有のシート構造を維持した窒化チタンTiNが生成することを、本研究で見出した。シート状のTiNの合成例はこれまでに無く、MXeneの種類を変化させることで様々なシート状窒化物の作製が期待できる。Ti3C2Txの加熱過程を詳細に調べ、TiNの生成機構を明らかにした。 また上記によって得られた改変MXene系材料について、空気電池の正極反応である酸素還元/発生特性の評価を行っており、イオン電池系電極としての特性と併せて、評価を継続している。
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