研究課題/領域番号 |
16K14392
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
大瀧 倫卓 九州大学, 総合理工学研究院, 教授 (50223847)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 熱伝導率 / 熱制御材料 / 構造相転移 / 金属-絶縁体転移 / Wiedemann-Franz則 / 格子熱伝導率 / 電子熱伝導率 / 三酸化二チタン |
研究実績の概要 |
構造相転移と金属-絶縁体転移が併発すると報告されているTi2O3(三酸化二チタン)について、DSCによる相転移温度の決定と、相転移前後での熱伝導率の変化を観測した。DSCでは明瞭な吸熱ピークが200℃付近に見られ、この温度で構造相転移が起きていると考えられ、この相転移温度付近で詳細な熱伝導率測定を行った。200℃付近で金属-絶縁体転移由来の比熱の増大による熱伝導率のギャップが観察され、400℃付近からは導電率の増大に伴って、熱伝導率は400℃での0.69 W/m Kから800℃では2.49 W/m Kへ増大し、動的サーマルインシュレーション材料として有望であることを見出した。しかし試料は脆く、機械的加工が困難であるという問題があったため、焼結性及び機械的強度の改善を目的として、焼結助剤としてそれぞれ0.5 mass%のB、Si、SiO2を添加した試料を作製した。特にSiとSiO2を添加した試料において顕著に粒成長が抑制されたが、どの試料の相対密度も約93%程度であり、緻密化は進行しなかった。しかし、焼結助剤を加えた3試料は全て機械的強度が向上しており、加工性の悪さが改善された。また、焼結助剤を添加した試料は導電率、耐酸化性、機械的強度とも向上したが、B添加試料においてこれらの向上が最も顕著であり、無添加Ti2O3と比較して相転移に伴う熱伝導率の変化幅は2.4倍に増大した。これらの結果から、Ti2O3への焼結助剤の添加は熱伝導率変化幅の増大に有効であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Ti2O3への焼結助剤、特にBの添加により、無添加試料と比較して導電率、耐酸化性、機械的強度とも向上し、相転移に伴う熱伝導率の変化幅は2.4倍に増大した。さらに焼結性を向上させることにより、一層の熱伝導率変化が得られると期待される。その一方、導電率の温度依存性にはヒステリシスが見られ、昇温時と降温時で熱伝導率変化の勾配が異なるため、これを解消することが望まれる。また、熱伝導率の変化幅は増大したが、変化率はあまり向上していないので、この点も今後の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
SPSと焼結助剤の併用により、Ti2O3の焼結密度の一層の向上を目指す。また、導電率に見られるヒステリシスの機構を解明する。熱伝導率の変化率(倍率)を増加させるため、微細構造制御により格子熱伝導率を低減し、電子熱伝導率の寄与を大きくする。また、Ti2O3以外の材料候補を探索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費に若干の残額が出た。
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次年度使用額の使用計画 |
試薬など実験用消耗品の購入に使用する。
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