研究課題/領域番号 |
16K14400
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
大平 圭介 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (40396510)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ドーピング / シリコンヘテロ接合太陽電池 / 触媒分解 / パッシベーション |
研究実績の概要 |
本研究は、非晶質シリコン薄膜に対し、熱損傷無く事後ドーピングを行う独自技術を用い、シリコンヘテロ接合太陽電池を製造するための基盤技術を確立することを目的としたものである。我々の過去の研究において、加熱触媒体線での原料ガスの分解で生成したリンおよびボロン系のラジカル種により、シリコン表面に極薄ドーピング層を形成できる“Catドーピング法”を独自に開発しており、この技術の非晶質シリコン薄膜への有効性も確認している。非晶質シリコン膜へのCatドーピングは、厚さ10 nm程度に自動的に制限されるため、厚さ20 nm程度のノンドープ非晶質シリコン膜にリンおよびボロンのCatドーピングを行うことで、既存のシリコンヘテロ接合太陽電池に類似のドープ非晶質シリコン/ノンドープ非晶質シリコン/結晶シリコン積層構造を容易に作製できると考えられる。 平成28年度は、シリコンヘテロ接合太陽電池への応用を目的に、Catドーピング条件の明確化を試みた。厚さ20 nmのノンドープ非晶質シリコン膜を結晶シリコン上に形成した後、リンドープもしくはボロンドープを行う実験において、ノンドープ非晶質シリコンのパッシベーション性能を劣化させることなくn型およびp型非晶質シリコンを形成できる処理条件を見出した。特に、ドーピング処理時の基板温度を向上させることで、パッシベーション性能の低下を抑えられる傾向があることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Catドーピングの条件に応じ、表面再結合速度への影響が異なる可能性が考えられるため、触媒体温度、基板温度、ガス流量、処理圧力を系統的に変化させることで、表面再結合速度を悪化させることなくCatドーピングが行える条件を明確化した。20 nm厚のノンドープ非晶質シリコン膜の堆積には、触媒化学気相堆積法を用いた。表面再結合速度は、マイクロ波光導電減衰法により求められる少数キャリア寿命から求めた。その結果、基板温度を高温にすることで、表面再結合速度の低減無くリンおよびボロンのドーピングが行えることを見出した。また、特にリンドープにおいては、ドーピング処理後にむしろ表面再結合速度が低減する条件が存在することを明らかにした。ドーピング時の基板温度が高いほど、形成されるn型およびp型非晶質シリコン層の導電率も向上できるため、太陽電池応用を見据えた際にも好適である。
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今後の研究の推進方策 |
Catドーピングにより形成したp型およびn型非晶質シリコン膜を用いてシリコンヘテロ接合太陽電池を作製し、整流性、発電特性の確認を行う。まず、リンドープ層およびボロンドープ層について、それぞれの利用可能性を個別に確認するため、n型層のみ、もしくはp型層のみをCatドープにより形成した太陽電池の作製を最初に試みる。Catドープを行わない面のドープ非晶質シリコン膜は、触媒化学気相堆積法で膜厚10 nm程度のp型もしくはn型非晶質シリコン膜を直接堆積して形成する。リンドープ層、ボロンドープ層それぞれについて、シリコンヘテロ接合太陽電池への利用に求められるドーピング条件を明確化する。その後、上記知見をもとに、両面にCatドープ層を形成した太陽電池を形成し、整流性および発電特性の確認を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度の当初計画では、太陽電池の試作も予定していたが、ドーピング条件の探索に予想以上に時間を要したため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
太陽電池の試作を平成29年度に進めるため、透明導電膜用スパッタターゲット、電極材料などの関連物品費を計上する。
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