研究課題/領域番号 |
16K14403
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
春日 敏宏 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30233729)
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研究分担者 |
平田 仁 名古屋大学, 予防早期医療創成センター, 教授 (80173243)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | バイオマテリアル / 骨形成 / ピエゾ電気 / 複合材料 / セラミック粒子 |
研究実績の概要 |
本研究では、高い延伸性を示すポリマーに圧電性セラミック粒子を分散し、ピエゾ電気を発生させることにより骨形成を促す、新しいバイオマテリアルの設計指針を提案することを目的とする。穏やかな生分解性を示すポリヒドロキシアルカノエートにニオブ酸ナトリウムカリウム(NKN)結晶粒子を複合し、通常の生活内での運動により生体内に埋入した材料に応力がかかることで帯電し骨形成を促すしくみを構築する。ポリマーとして高延伸性のP(3HB-co-4HB)を選択して圧電性NKN粒子を埋め込んだ複合体を作製する。 NKNは通常の焼結法により作製したが、スプレードライ法を組み込むことで比較的凝集の少ない粒子(1~3μm)を得ることができた。 次に、組成の異なるP(3HB-co-4HB)単体の機械的、熱的、電気的特性を評価したところ、P(3HB-co-4HB)は共重合された4HB含有率によってその機械的、熱的特性および誘電率が変化した。P(3HB-co-4HB)は絶縁体であることがわかった。圧電性はPLLAと比較して非常に小さく、単体での使用による骨再生促進は困難であることが示唆された。 さらに、NKNをP(3HB-co-4HB)と複合化し、その延伸性および圧電性を評価した。NKN/P(3HB-co-4HB)複合フィルムは、厚さ方向の荷重に対して、7 vol %以上のNKNを添加することでPLLAよりも優れた圧電性を示した。一方、長辺方向の荷重に対しては7 vol %のNKNにてPLLAと同程度であり、11 vol %添加することでPLLAの約20倍の値が得られた。また11 vol %のNKNを添加した試料において、破断伸びは約700 %を維持していたことより、この試料は延伸性および圧電性に優れた試料であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
圧電性無機粒子NKNの作製方法の検討、マトリックスとするポリマーの物性把握と選定、さらにその複合化方法の検討と、多大な課題があったため検討に時間を要し、やや過大な計画設定としたこともあるが、当初予定していた細胞培養試験による評価までに至らなかった。 ただし、おおむねの作製手法は把握できたと考えており、次年度以降については順調に進捗できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
28年度に計画していた細胞培養試験を実施する。マウス骨芽細胞様細胞を用いて、上記複合体への初期接着性、増殖性、分化能について観察する。この際、試料はフィルムキャスト法により得た試料について分極を施し、これに引張応力を加えたものと加えていないものを比較することとする。 好適な性質を示す複合体について、生体内環境に近い擬似体液やトリス緩衝液中での変化を調べる。 実際の使用においては患部に巻き付けるなどの施術がとられることが想定されることから、繊維状に加工することを試みる。その繊維状複合材料の圧電性を評価する。また、力のかけ方による帯電量の変化をとらえるよう実験を工夫する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は原材料選定と複合材料合成に予算をほぼ使用したが、予定していた細胞培養試験を実施するに至らなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度計画していた細胞培養試験内容に加え、本来の次年度実施予定であった培養試験内容との重複などを見直し精査して、効率よく使用する。
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