本研究では、高い延伸性を示すポリマーに圧電性セラミック粒子を分散し、ピェソ電気を発生させることにより骨形成を促す、新しいバイオマテリアルの設計指針を提案することを目的とした。穏やかな生分解性を示すポリヒドロキシアルカノエート(PHA)にニオブ酸ナトリウムカリウム(NKN)結晶粒子を複合し、通常の生活内での運動により生体内に埋入した材料に応力がかかることで帯電し骨形成を促すしくみを構築することとした。 エレクトロスピニング法を用いてNKN/PHA複合不織布を作製したところ、厚さ方向の荷重に対して、フィルムよりも高い圧電性を示した。不織布の方が柔軟であるため、より大きく変位したことが考えられる。また、均一にNKN粒子が分散した構造より、表面に多く存在した構造とする方が、より高い値が得られることがわかった。 そこで、摩擦帯電 (TC)法を用いて静電的にPHA繊維表面にNKNを付着させ、さらにポリマーの軟化が始まる温度付近で熱処理することで、表面にNKN粒子の一部が埋め込まれた状態を作ることに成功した。NKN粒子添加量や熱処理温度を変化させることで、NKN粒子固定量や合着面積が変化し、圧電性が変化した。 さらに、NKN/PHA不織布とPHA不織布をホットプレスにより積層化し、その機械的引張特性や圧電性を評価したところ、単層のNKN/PHA不織布と比較して、機械的性質、圧電性とも大幅に向上した。不織布中の繊維同士を適所で合着させることで、機械的特性や圧電性を向上させることができた。圧電定数d33 0.6 pC/N、静電容量 40 pF、比誘電率1.45、誘電損失3.1%であった。2 Hzの振動で発生電圧160 mVが得られた。これはPLLAの約2~3倍であり、圧電性による骨形成促進が十分に期待される。
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