本研究は液相の厚みを100 nm レベルまで超薄層化した超薄液膜反応セルを作製し,真空紫外(Vacuum Ultraviolet: VUV)光透過率が小さい液体中であっても,固体表面に有効にVUV光が到達し,表面光化学反応を誘起できる液相VUV表面改質プロセス技術開発を目的としている.特に酸化グラフェン(graphene oxide: GO)の液相VUV還元実験への活用を目指している.得られた成果は以下の通りである. 1) 固液界面VUV光照射システムを構築した.超薄液膜に用いる有機溶媒の探索を行い,直鎖アルカンを液相に用いれば,固体表面にキセノンエキシマランプからのVUV光(中心波長172 nm)が到達することを実証した. 2) 構築した固液界面VUV光照射システムを用いて,シリコン表面に担持したGOに液相VUV光照射を行った.得られた試料のXPS測定結果から,液相中VUV光照射でも還元反応の進行が示唆された.これまでに高真空環境でVUV光照射した場合に光還元が進行することを当研究室では報告してきた.液相還元で得られたGOの還元体(reduced GO: rGO)のシート膜厚や還元度は高真空環境における結果と概ね良い一致が得られた.液相VUV光照射でもGOに含まれる酸素含有官能基がVUV光化学反応で解離したことが示唆された. 3) 直鎖アルカンにアルキルアミン分子を混合した液体を超薄液膜に用いて同様にVUV光照射実験を行った.その結果,GOの光還元反応と同時にアルキルアミンがシートに結合することが示唆された.液体に接する固体表面においてVUV光によるGOの励起が生じ,酸素含有官能基の解離だけでなく,アルキルアミン分子との結合反応を誘起したと考えられる.本プロセスは固体表面に担持したGOへの分子修飾に展開が可能である.
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