研究課題/領域番号 |
16K14409
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
糸井 貴臣 千葉大学, 大学院工学研究科, 准教授 (50333670)
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研究分担者 |
石橋 正基 東京都立産業技術高等専門学校, ものづくり工学科, 准教授 (40353263)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 電磁圧接 / 異種金属接合 |
研究実績の概要 |
28年度は、ニッケル(Ni)メッキを施した冷間圧延鋼鈑(SPCC)と純アルミニウム板(A1050)について電磁圧接を行い、その界面組織と接合特性について調べた。放電エネルギーを変化させて接合を行ったところ、放電エネルギーが1kJ以上で両板の接合が可能であった。良好な接合特性を示した接合板について組織観察を行った。電磁圧接では、可動板が固定板に衝突後、コイルの中心線から接合端部側に向けて接合が進行し、爆発圧着と同様に衝突点の移動速度、固定板と可動板との衝突角度が波状界面接合の条件を満たすようになる部分で接合が行われる。作製した接合板のいずれの接合界面にも接合時の衝撃による塑性流動により生じた波状模様が観察された。この接合界面に観察される規則的な波状模様は爆発圧着等の衝撃力を用いた接合界面で観察される波状模様と同様のメカニズムで形成されると考えられる。また、放電エネルギーの増加に従い、接合幅が増加する傾向がみられた。接合界面についてSEM観察を行ったところ、接合界面に部分的に厚さ数μm程度のAlとNiからなる中間層が観察された。TEM観察を行った結果、この中間層はNiと、NiとAlの2成分からなるアモルファス相で構成されており、接合界面にアモルファス相が形成していることが分かった。接合界面における中間層の形成において、局部的な溶解が起こり、その後急冷却を生じたことに起因すると考えられる。以上の結果から、接合界面に目的としたアモルファス相のその場合成に成功し、SPCCとA1050板の強固な接合を達成できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、鉄とアルミニウム板の接合において、接合界面に脆性的な金属間化合物を形成させることなく、アモルファス相を形成し、高品位な接合界面を実現することで、最終的に高強度な鋼板(ハイテン鋼鈑)とAl合金(6000系等)板を接合することにある。28年度は、電磁圧接によりSPCCとA1050板の接合において、Niメッキ層を介して接合を行うことで、NiとAlが接合界面で局部溶解・急冷凝固することでアモルファス相の形成に成功し、目的とした接合界面が得られた。放電エネルギーを比較的高く設定する事で、局部溶解を生じ、かつ接合が可能である一方、可動板が固定板に衝突する時の衝撃力が高くなる事から、Niメッキ層自体が破壊したり剥離したりする可能性がある。そのために、可動板と固定板の間隙等の調整についても見当して接合条件を調査した。その結果、Niメッキ層は比較的高い放電エネルギーでの接合においても、その衝撃力により剥離することなく、Alと溶解反応を生じる条件を明らかにした。このことは、電磁圧接において、放電エネルギー等の実験条件を調整し、その衝撃電磁力を利用することで接合界面に非平衡物質の創製ができることを示唆している。以上の事から、目標とした接合界面層のその場合成に成功しており、29年度の、より高強度な板同士の接合に向けての接合条件の決定において重要な結果が得られていることから、28年度の目標は概ね達成できているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
29年度は研究計画の最終年度にあたり、最終目的としたNiメッキを施したハイテン鋼(590MPa級)とAl合金(6000系等)の電磁圧接による接合を行う。28年度の接合条件を鑑みながら、より高強度な板同士の接合を試みる。28年度の組織観察の結果から、アモルファス相が局部的に形成したことが明らかとなっており、可能であれば、より広い接合界面での中間層形成についても検討する。作製した試料について接合界面組織をSEMおよびTEMを用いて詳細に解析し、接合メカニズムを明らかにする。 従って、29年度は目的とした板同士の強固な接合を達成すると共に、詳細な界面組織観察を行うことで接合メカニズムを調査し、冶金学的手法を用いた非平衡凝固による接合界面制御について総括する。
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