申請者らはこれまで、純鉄のフェムト秒レーザ駆動衝撃圧縮によって高密度転位を有する特異なナノ結晶が形成されその過程は従来の強加工プロセスとは異なること、さらに圧縮初期過程で超高速かつ巨大に変形することを見出してきた。一般に、超高ひずみ速度を実現するには、超高速転位あるいは転位の超高速増加が必要となる。しかしながら、この現象は微視的すなわち格子欠陥レベルではいまだ満足に説明されていない。本研究の目的は、超高ひずみ速度で物質が変形する際の転位の挙動をX線で直接計測することによって、超音速転位あるいは転位を介在しない塑性すべりの存在を調べ、衝撃波頭背後での転位核生成モデルを新たに構築することによって、超高ひずみ速度変形の機構を明らかにすることである。 今年度は、理化学研究所 播磨事業所 X線自由電子レーザー施設SACLAに構築したフェムト秒レーザ駆動衝撃圧縮現象その場計測装置を用い、FCC構造である純ニッケルの圧縮初期過程の格子ひずみをその場計測した。衝撃波を駆動するのに用いたフェムト秒レーザの波長は800 nm、パルス幅は40 fs、パルスエネルギーは100 mJであった。デバイリングを取得する面は、主すべり面である111面と、主すべり面から大きく外れた200面とした。その結果、111面と200面とで異なる圧縮挙動が観測された。 本萌芽研究では、BCC構造である純鉄と、FCC構造である純ニッケルの衝撃圧縮初期課程の格子ひずみ挙動を調べた。その結果、超高速ひずみ変形下では塑性の発現機構が従来法とは異なることが示唆された。
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