本研究では、水中で正に帯電するアミジン基で修飾された直径200~700 nmの粒子が互いに静電反発して自己組織的に形成する三角格子配列を、負に帯電したガラスやプラスチック基板全体に固定し、この構造上にアルミニウムを蒸着して得られる金属ナノ構造から生じるプラズモン共鳴および干渉の効果によって構造色を発現させる技術を確立した。この方法を用いて、ガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレンシート表面を着色できることを確認した。 アルミニウム表面の凹凸、基板・粒子上で乱反射した光が原因で、発現色の彩度が低かったため、可視光域全域で光を吸収するゲルマニウムおよびクロムを数ナノ製膜した。その結果、特に短波長側の散乱光が吸収され発現色の彩度が向上することを確認した。平成29年度は、より汎用性の高い炭素で光吸収層を形成し、同様の効果を確認した。更に、黒色のPET基板を用いた場合は、基板側での乱反射を効率よく抑制でき、彩度向上に最も有効であることが分かった。 形成した構造色構造の耐摩耗性や加工性を向上させるために、PETフィルム上に形成した構造色構造を市販のラミネートフィルムで保護した。ラミネートフィルムで保護した構造色構造は、触る、擦る、曲げる等の日常的な取扱動作では劣化しなかった。最小20 mmの曲率半径まで曲げても、構造色は維持された。 研究期間内に加飾・塗装業界専門誌2誌から原稿執筆依頼を受けた。また、国内特許2件の出願とPCT出願1件を完了し、国内企業との共同研究を開始した。同共同研究に対してJSTや大阪市からの研究支援も得て、順調に商業利用に向けて発展している。
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