研究課題/領域番号 |
16K14421
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
小林 千悟 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (10304651)
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研究分担者 |
間島 直彦 愛媛大学, 医学系研究科, 寄附講座教授 (70274321)
平岡 耕一 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (00199043)
岡本 威明 愛媛大学, 教育学部, 准教授 (20398431)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 感温磁性材料 / 骨再生 / 長距離相互作用 |
研究実績の概要 |
生体に使用できる感温磁性材料の開発を目指し、Hf-Fe-Cr合金の研究を進めてきた。そしてさらに、より汎用性のある金属の利用を考えて、Hfを同族元素であるTiに置き換えたTi-Fe-Cr合金の研究を進めている。Crを第3元素として添加した理由は、耐食性を向上させるためであり、これによって生体適合性の向上も図れる。Ti-Fe合金の場合もHf-Fe合金同様に、アーク溶解法にて作製する場合、溶解の最中に砕け散るという問題が発生し、合金作製が非常に困難であった。溶解の際の試料サイズならびに溶解電流などを適切に調整し、試料作製は可能となったが大きなサイズ(1 cm角程度以上)の試料を作製することは依然困難であった。そこで、アーク溶解で直接目標組成の合金を作るのではなく、目標組成よりFeの量を低くした合金と高くした合金を作製し、それら合金を小片状に切り出したのち、目標組成になるように量を加減してるつぼ内に入れて、真空管内でるつぼを加熱して試料を溶解することによって目標組成の合金を作製した。このような方法を用いることにより、溶製した合金は割れることなく大きなサイズ(1 cm角程度以上)の合金も得られるようになった。作製した試料の生体適合性を骨芽細胞を用いた細胞毒性試験から検討した結果、Ti-Fe合金は耐食性が低くFeイオンの放出に伴うと考えられる細胞の死滅が確認され、生体材料としては不適であった。一方、Crを5at%, 10at%添加したTi-Fe-Cr合金では生体用として利用されているSUS316Lと同程度の耐食性を示し、骨芽細胞培養試験の結果、細胞適合性は著しく改善された。磁気特性は室温でTi-Fe合金は強磁性であったが、10at%Cr添加したTi-Fe-Cr合金では常磁性的であり、10at%Cr添加により磁気変態温度は低下して室温未満となっていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Hf-Fe合金の耐食性が低く、生体適合性が予想していた状況より悪かったため、当初の計画を変更してHf-Fe-Cr合金系へと変更を行い、その結果、生体適合性の著しい改善が得られた。また、Hfより汎用性の高い金属であるTiに置き換えてHf-Fe-Cr合金系と同様に実験を進め、Ti-Fe-Cr合金の場合もCr添加により耐食性は改善され、生体適合性が向上することが明らかとなった。また、特に計画が遅れた原因は、H28年度に直面した「アーク溶解のみで目標組成の大きな合金試料を作ることができない」という問題であった。その問題は、H29年度にアーク溶解のみではなく、アーク溶解と真空るつぼ溶解を併用することにより解決できたので、研究の遅れをH30年度に取戻し、研究を完成させる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
H29年度に試料の作製方法が確立したので、H30年度は種々の組成のTi-Fe-Cr合金の磁気特性の温度依存性を解明するとともに、骨芽細胞を用いた細胞培養実験から生体適合性を評価する。細胞の長期培養の結果が良好なものとなれば、マウスを用いた生体内における適合性を検討していく。また、マイクロ・ナノサイズにまで試作した合金を粉末化しそれを骨芽細胞に取り込ませて骨芽細胞の遊走を直接的に制御する研究も同時に進めて行く。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由):合金の作製が、研究計画以上に時間がかかり、その分、当初計画していた細胞培養実験の実験量やNMRなどでの測定が少なくなったため、次年度使用額が生じた。 (使用計画):H29年度に実施予定であった細胞培養や動物実験の一部は、H30年度に実施する計画であり、次年度使用額はその実験費用に充てられる。
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