研究実績の概要 |
生体に使用できる感温磁性材料の開発を目指し、Fe-Ti-Cr合金の研究を進めてきた。Crの添加量を増加することによって、試料への骨芽細胞接着数は増加することが明らかとなった。また、耐食試験の結果よりCrの添加量を増加することによって合金の耐食性は向上した。Fe-31at%Ti-(0, 5, 11)at%Cr合金(以降、組成はat%で示す)の結果を例に詳細を述べると、まず、すべての合金においてTiFe2(Laves相)構造を呈し、Fe-31Ti合金にCrを11%まで添加してもTiFe2(Laves相)の構造は維持された。それらの試料上で骨芽細胞を1h培養すると、Cr添加量の増加にともない接着細胞数は増加して、Fe-31Ti-11Cr合金は生体適合性に優れることで知られている純チタンと同程度の接着細胞数を示し優れた細胞適合性が示唆された。 種々の合金に対し、印可磁場0.1テスラにおける合金の磁化の温度依存性を測定し、Tcを求めたところ、Fe-25Ti-11Cr合金で-87.5 ℃、Fe-27Ti-11Cr合金では-89.6 ℃、Fe-31Ti-11Cr合金では-153 ℃と低温であった。Tiの添加量とTcの関係を整理した結果、Fe-11Cr合金にTiを17~19%添加することで体温付近にTcを設定できると予想されたため、それらの合金を作製しTcを測定したが、-58℃程度までしか上昇しなかった。そこで、より高温のTcが期待できるFe-Zr-Cr合金を種々の組成に対して作製し、そしてTcを測定した。その結果、Fe-31Zr-16Cr合金で体温付近にTcを持つことが明らかとなった。 今後、Fe-Zr-Cr合金の細胞適合性試験や組織制御による磁化特性の制御を行い、それら合金を持ちいた細胞制御技術に関する研究を継続する。
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